後悔しないためにインプラント治療を受ける前に知っておくべきこと
東京都渋谷区広尾にある歯医者『モウリデンタルクリニック』院長の毛利です。
今回のテーマは「後悔しないためにインプラント治療を受ける前に知っておくべきこと」について解説していきます。
インプラント治療をする前にどんなことが必要なのか?何を知っておくべきか?
実際に治療を行ってから『思っていたのと違った』となる前に、リスクなどを把握してからインプラント治療の相談をしてみてください。
目次
1.インプラントについて
歯を失った部分に、生体親和性の高い金属であるチタンやチタン合金でできた人工歯根を埋め込み、歯の代替えとして用いるインプラントですが、そもそもどんな理由で歯を失ったのか?が重要です。
というのも、事故や打撲、破折などで失ったのであれば仕方のないことですが、日常の怠慢によって歯を失ったのであれば、インプラントも同様に失う可能性があります。歯を失った原因について究明し、生活改善を心がけなければ、後に天然歯と同様に喪失する可能性があるということです。
天然の歯はとても優秀です。歯の中には歯髄(神経)があり、歯根の周りには歯根膜があります。歯髄と歯根膜は歯と歯の周りの組織を健全に保つための働きを持ちます。
インプラントには、歯髄も歯根膜もありません。
ゆえに、歯と同じように働くことができない部分があります。結論から言えば歯と同じように、日常で用いることはできますが、歯と同じようにエイジングするものではありません。
年を重ねていくごとに変化する身体に、自然と追随できないのがインプラントなのです。
近年、インプラント治療が広く普及する一方で、インプラント治療に苦しむ方々も残念ながら少なくありません。インプラント治療について正しい知識を持ち、歯科医師に全て委ねるのではなく、歯科医師と協力してインプラント治療に臨まれることを勧めます。
2.抜歯判定について
残念ながら歯科医院ごとに抜歯の判定基準が異なることがあります。さらに言えば、虫歯治療の基準も異なることは珍しくありません。
虫歯の有無、治療の必要性についても正反対に診断されてしまうことがあります。そして、抜歯するか否かについては、同じ歯科医師であっても、患者ごとにその判定基準を変えることもあります。
なぜでしょうか?
それは、医学と医療が異なるからです。
医学は科学であり、患者さんの気持ちや事情は関係ありません。科学的な根拠に基づいて判断します。ところが医学だけでは患者さんを治すことはできません。
各患者さんの考え方、価値観や諸事情を踏まえて、医学的根拠と照らし合わせて判断します。
医学的には抜歯であっても、患者さんが抜きたくないといえば抜歯できませんし、その逆も然りです。さらに、歯科医師の診療スタイル、治療方針によっても判定基準は変わります。歯科医師の技術レベル、治療方針、患者さん一人当たりの診療時間、諸事情等においては、各歯科医師ごとに診断そのものが異なることが少なくありません。
歯科医師ごとに異なるゆえに、最初に抜歯と判定されたとしても、他の歯科医師が抜歯の必要はないと判定するケースもあります。
説明がわからなかったり、納得できない場合は、判定を鵜呑みにせず、セカンドオピニオンを受けるようにしましょう。
3.多くの人が勘違いしているポイント
インプラントは危ない、インプラントは一生持つ、専門医なら大丈夫、インプラントは安全、など、いろいろと言われていますが、そのどれもが、インプラントの一面であり、全てではありません。
歯科医師でさえ、インプラントに対する見解は様々であり、WEBの記事やSNS、テレビ等で歯科医師が提唱する内容には、偏った意見が少なくありません。インプラントが良いか悪いかという議論や意見は、前提と目的、各諸条件によって変化します。一元論でインプラントを考えると、正しく理解できません。
絶対的に言えることは、インプラント治療は、治療条件が満たされているほど成功しやすく、術後の管理がとても大切だということです。
各個人それぞれに、条件は異なるので、一概にインプラントをイメージで決めつけることのないようにしましょう。
4.インプラント治療の闇
インプラントにまつわる事故や、失敗例、しいては訴訟に至るケースは存在します。
中には悪質なケースや、歯科医師の無知によって事故が起きることも確かに存在します。
ゆえにインプラントそのものを否定する歯科医師も存在しますし、いまだにインプラント治療を懐疑的に捉える歯科医師もいるということです。これは当然のことで、インプラント治療を全ての歯科医師が正しく理解し、正しく扱えるわけではありません。
どんな業界にも、ある一定数、優れない人間がいることは否めません。
また、この背景の理由の一つとして、多くの歯科医師はインプラント治療を専門に行っているわけではなく、日常の一般診療をこなしながら、インプラントをオプションとして導入しています。ゆえに、インプラント治療に専念できない環境のままでは成功率は下がってしまいます。目安として、担当歯科医師が一人の患者さんに対応できる時間が長い歯科医師を選ぶことをお勧めします。
もちろん、必ずしもというわけではありません。チームで対応している場合もあるので、一つの目安として考えて下さい。
さらに担当医が行くたびに代わる歯科医院は避けることを勧めます。
インプラント治療には事前準備と術後管理が重要なので、担当医が変わると一貫性が取りづらくなります。治療を急かしたり、説明が不十分な場合は、セカンドオピニオンを受けることをお勧めします。
5.インプラント治療の光
現実として、義歯やブリッジが歯の欠損部を補っていた時代に比べてインプラント治療は歯科治療に大きな変革をもたらしました。
義歯やブリッジの欠点を見事に解決し、歯科治療計画の選択肢も大きく広がったのです。
基本的に、条件さえ満たしていれば、インプラント治療はさほど難しくありません。
また、成功率も高く、違和感が少ないので入れ歯やブリッジに比べて快適です。
入れ歯の固定源としても使用できるので、入れ歯を小さくすることも可能になりました。
さらには、矯正治療における固定源としてもかなり有効です。インプラントが歯科治療の幅を広げ、様々な恩恵をもたらしてきたことは明らかです。
悪いニュースが巷で流れますが、それ以上の恩恵があることも事実です。
インプラント治療を成功させるために、インプラント手術のみならず歯周組織や咬合、術後管理についてこれまで以上に歯科医師が歯科治療を包括的に考えるようになったのです。
インプラント治療が歯科治療の選択肢と可能性を大きく広げたと言えるでしょう。
6.専門医資格について
インプラント学会の認定した専門医は、学会の規定する諸条件を満たすことで認定されます。とはいえ、その資格が必ずしも患者さんにとって最良の治療を提供するものではありません。
治療方針や、理念は歯科医師それぞれですから、知識や技術に長けていたとしても患者さんの価値観や方針にマッチしていなければ良い成果に結びつきません。
また、学会ごとに専門医の難易度は異なり、時代や学会によっては名ばかりの専門医も存在します。また、専門医でなくとも十分な知識と技術を持つ歯科医師も存在します。
専門医は一つの目安として考えたうえで、最終的に患者さん自身が納得できる歯科医師を選択することをお勧めします。
7.インプラント治療成功のための鍵
- 歯科医師から十分な説明を受けている、患者がインプラント医療について理解している。
- 周囲に十分な骨があること(前後左右に1.5mm〜2mm以上の余裕が望ましい)
- 歯科医師の診断力、技術力が高い
- 糖尿病や心疾患などの全身疾患がない(あっても不可能というわけではありません)
- 喫煙を避けること(喫煙者にも治療は可能ですが、成功の確率は下がります)
- 顎骨の大きさや、力学的な問題にあわせたインプラントのサイズや種類を選ぶこと
- そもそも歯を失った原因を明らかにし、対策をきちんと立てること。
- 認可をうけたインプラントのメーカーを選ぶこと
- インプラント以外の歯科処置も丁寧にできる歯科医師を選ぶこと
- 歯科医師と患者さんがお互いに良好な信頼関係にあること、あるいは各専門医と適切な連携がとれる環境にあること
- インプラント治療後に、定期的な健診を受けること
8.インプラント治療に向いている人
- 顎の骨が十分にある方
- 事故やスポーツなどのアクシデントが原因で歯を失ってしまった方
- 歯をとにかく大切に考えている
- 健康を大切に考えており、毎日の生活習慣や食習慣を意識している
- 喫煙していない
- 全身疾患が無い
- 歯磨きをしっかり行える
- 定期的に歯科医院に継続して通える
- ブリッジをするための歯がない、または土台として不十分な場合
- 入れ歯が合わないと感じる方、入れ歯の手入れが面倒と感じる方
- 歯の見た目を重視される方
9.治療に向いていない人
- 歯と歯に関連する健康に価値を感じない
- 健康を維持するための生活習慣を意識していない
- 喫煙している
- 歯磨きの回数がすくない、時間が短い
- 間食が多い
- 骨粗鬆症がある
- 全身疾患がある(糖尿病、心筋梗塞。免疫疾患など)
- そもそも外科処置が難しい人(医師から外科処置を止められている方)
- 歯科治療をすればそのあとは何もしなく良いと考えている
- 妊娠中の方、年齢が20歳以下(妊娠中は体調が不安定になり易く、20歳以下は顎骨の成長があるため)
10.インプラント治療後の予防管理法
インプラント治療後に起こる疾患の多くは、インプラント周囲の組織が破壊され、インプラントが脱落してしまうことです。これをインプラント周囲炎と言います。
原因として、口腔内の清掃不良、噛み合わせによる、インプラントへの過重負荷が主たる原因です。インプラントは歯根膜を持たないために、インプラント周囲の免疫が天然歯より劣ります。
また、噛み合わせの問題を解決しないままインプラントを用いてしまうと、時間が経つにつれてインプラントへの過重負担が増し、インプラント周囲の骨を破壊することになります。
インプラント治療後の予防管理として、正しい歯磨きの習慣を身につけ、歯磨きの成果が出ているかどうか歯科医師に確認してもらうようにしましょう。
また、口腔内の歯は時間をかけて変化していきますが、
インプラント自体はほとんど変化しないので、他の歯に自然に追従することができません。
他の歯の変化に合わせて、インプラント上部構造を調整または交換する必要があります。
また、天然の歯は少しずつ咬合面を削りながら前方に傾斜していきますが、インプラント自体は傾斜しないので、隣接する歯との間に隙間が生じることがあります。
これも上部構造の交換、あるいは矯正治療で対処できるので、口腔内の変化の有無を歯科医師が確認する必要があります。
インプラントに限らず、口腔内に何かを詰めたり、被せたり、装着したりすれば、どんなものでも材質の劣化、変化をもたらすことを覚えておきましょう。
歯の治療が完了すれば安心ではなく、むしろそこからが本当のスタートだということを忘れないでください。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
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記事の著者:モウリデンタルクリニック 院長 毛利 啓銘
モウリデンタルクリニックは患者様の数十年後の健康を見据えた、総合的で一貫性のある歯科医療を提供するクリニックです。
特徴として、医学、科学に基づくだけでなく、患者本位に沿った総合的歯科医療を提案、実践しています。これは予知性を持った、合理的かつリスクの低い歯科医療です。
患者様には、問題の原因、歯科医療の本質について分かりやすく説明し、各予防法、各治療法について適切に選択して頂く事を大切にしています。
経歴/所属学会
■東京歯科大学卒業
https://www.tdc.ac.jp/
■日本口腔インプラント学会所属
https://www.shika-implant.org/
■ドイツ Ankylos Implant認定医
https://www.dentsplysirona.com/ja-jp/explore/implantology/ankylos.html
■ドイツ XiVE Implant認定医
https://www.dentsplysirona.com/ja-jp/explore/implantology/xive.html
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■歯の矯正をする前の注意点!必ず知っておいた方がいい矯正の知識