噛合治療
噛み合わせは、全身の重心バランスやほかの口腔内トラブルと密接に関係しています。
歯科治療を受けてもなかなか治らない、原因はよくわからないけれど体調不良がある場合、一度噛み合わせを調べてみることをおすすめします。
噛み合わせと身体のバランス
噛み合せは、全身の重心バランスと密接な関係にあります。噛み合せのずれは、頭部のバランスを狂わせることにつながります。
人間の身体の重心点は、頭部と腰部にあります。
特に頭部の重心がずれてしまうと、支えている頚椎のバランスが崩れてしまい、腰部バランスにも影響します。
頭痛、肩こり、腰痛、体調不良、免疫不全、不妊症、耳鳴りなどが噛み合せの改善によって解決する症例は確かにありますが、本当のところ、全ての因果関係が明らかになっているわけではありません。
噛み合わせをよくすることが、万病にたいして有効とは言い切れません。しかし少なくとも、噛み合わせのバランスを適正化することによって、身体の重心をとりやすくしたり、頸部の血流やリンパの液の流れが改善されるということは想像するに難しくはありません。
全身という観点でみれば、噛み合せはあくまでも一つの要因にすぎませんが、大切な要因であることも認識しなければなりません。
人間の身体において、両側が対である関節は、顎関節のみであり、左右のバランスのあり方が関節の機能に大きく影響してきます。
左右のバランスに狂いが生じると、歯だけではなく、顎関節、歯周組織にも良くありません。
身体の重心バランスが適正であることは、健康であるための重要な要素です。身体ゆがみや、重心のずれが生じている場合は、必ず頭頸部のバランスの確認を取る必要があります。
正しいみ合わせのバランスを最初にある程度確保しながら、整体等の治療を受けることをお勧めします。
この時、整体の先生と歯科医師が良く話し合うことが良いでしょう。
正しい噛み合せは、正しい身体のバランスに大きく貢献します。
ただし、きれいに並んでいることが正しい噛み合せとは限りません。筋肉や、顎関節のどの周囲組織との調和が最も大切です。
習慣化された関節や筋肉の正しい動きに対して、歯の形態や並びが正しい関係にあることこそ理想的な噛み合わせといえます。(勿論、審美的に優れていればなおさら良いといえます)日常の動きを考慮し、将来の変化を予測し、様々な視点で噛み合わせのバランスをとることが重要なのです。
歯科治療による噛み合わせの悪化
歯科治療を行うことによって噛み合わせが悪くなることがあります。
歯は上下でぶつかり合うことによってその効果を発揮しますが、そのバランスを悪い方向に変えるような施術を行えば治療行為そのものが悪化の原因となり得るのです。
歯科治療によって噛み合わせが悪くなる例を挙げましょう。
- 虫歯治療でかぶせたものが最初から合っていない(患者さんは慣れたと思ってそのまま使ってしまう)
- かぶせたものを、噛み合わせの変化に応じて調整しない
- 審美性を優先させ、機能性を犠牲にする治療を行った
- 歯ぎしりや食いしばりを考慮せずに治療した
- 不適切な矯正治療
- 矯正治療後、噛み合わせの安定を図るための検査と治療を怠った
最も厄介なことは、これらの問題を患者さんが早期に自覚することが難しいという点です。
このために長い間放置されれば、いくつかの原因が重なってしまい、もつれた糸をほどくように治療しなければなりません。
早期発見、早期対処こそ最も効果的です
歯が生えてくる過程では、筋肉や骨格も同時に成長することによって、そのまま天然の状態であれば、歯と筋肉と顎関節の関係はおおむね良好ですが、歯科医師が治療を行えば行うほど、歯の形や質は本来のものとはかけ離れてしまい、それまで良好だったバランスが崩れてしまうのです。
小さなずれであれば、筋肉はその動きを補正してくれますが、ずれが増えていけば、少しずつその補正が追いつかなくなることで問題が生じるのです。
歯科治療において噛み合わせをどこまで重要視するかはケースバイケースですが、
- 応急処置を繰り返してばかりいる
- かぶせものや詰めものがたくさんある・かぶせものや詰めものが時々外れてしまう
- 歯が浮いたような感じがいつまでもある
- 耳の付け根のあたりが痛い
- 口が開きづらい
- 歯科治療後、どこで噛んだら良いのかわからない
- 虫歯で歯が崩壊している
- 歯がしみるのに、歯科医師からは問題ないといわれるなどの場合は噛み合わせの診査が必要になります。
咬合治療にはさまざまなアプローチがあり、一つのやり方がすべての症例に有効ではありません。
よい治療のためにはできるだけ原因を明らかにし、治療目標を明らかにする必要があります。咬みあわせの問題を残したまま、歯科治療を行えば将来的にいろいろなリスクを残してしまうでしょう。
包括的歯科治療という言葉があります、歯や歯肉のことばかりでなく、口腔機能全体を根本から考える治療です。今までの歯科医師は歯のことばかり考えて治療してきましたが、歯科医学の発展によって、歯科治療は総合的あるいは複合的に行われる時代になったのです。
歯のことばかりにとらわれてしまい、口腔全体や将来へのリスクを見落とさないようにしましょう。
噛合治療の費用
咬合治療 | 16,500円 一歯(プロビジョナルクラウン作製回数の制限なし) |
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調整料 | 3,300円 |
歯の形態を段階的に適正化させ、噛み合せを理想的な状態に導く治療です。 治療期間は症例に応じて、3ヶ月~12ヶ月となります。 (注)プロビジョナルクラウン(仮歯)を作製し、咬合治療を行う場合この費用が発生します。 下顎位の偏位を伴い、更に歯の形態改善が必要な場合のみに行います。 噛み合せそのものを根本から大きく改善する場合に必要となる治療です。 当院にて補綴治療(自由診療)を行なう場合はこの費用はかかりません。 |
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プロビジョナルクラウン(仮歯) | 3,300円~5,500/1本 |
治療期間について
咬合治療における治療期間は各症例によって異なります。
診査、診断を行った後にお伝えすることができます。
噛合治療についてのよくある質問
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正しいかみ合わせってどんな咬み合わせですか?
正しい噛み合わせの定義は、各歯科分野(矯正学、咬合学、補綴学、保存学)ごとに様々ですが、共通して言えることは、歯周組織と顎関節に悪影響を及ぼさず、口腔機能を最大限に活用できる状態を指します。歯科医学的に、噛み合わせの理想の形態がありますが、教科書的に正しいかみ合わせが全ての人に当てはまるものでもありません。
各個人にとって良いかみ合わせがそれぞれにあるということです。
歯科医師が提唱する正しさが、全ての人にとって正しいものではありません。正しさとは、目的と前提によって変化するということです。
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噛み合わせが悪いとどうなりますか?
悪い噛み合わせを放置すると、歯周組織の破壊や顎関節症、不定愁訴の誘発につながります。
また、咀嚼効率が下がり、胃腸への負担が増加し、発音に悪影響を与えます。そして、悪いかみ合わせは頭部のバランスを崩すので、これにより身体全体の骨格、筋バランスに悪い影響を及ぼすことになります。頸部の血流やリンパの流れも悪くするので身体の可動、連動だけでなく、疾病、疾患、不調、体性感覚にも及び、自律神経系も影響を受けることになります。寝つきの悪さ、胃のむかつきなどの内臓の不調につながることも。
顎関節の後ろには平行バランスをつかさどる重要な器官があり、平行感覚への影響がでます。特に奥歯に被せ物や詰め物を長年使用している方は歯ぎしりや食いしばり、非対称性の咬耗によりかみ合わせが悪くなる傾向が強いので、定期的に噛み合わせのチェックを行うようにしてください。
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寝ているときに歯ぎしりをしているらしいのですが、歯ぎしりって歯に悪いのですか?
就寝時の歯ぎしりは身体が自分の意志とは無関係に起こすもので、その程度と頻度は自分でコントロールできません。歯ぎしりの程度と頻度が高くなると様々な疾患を引き起こします。歯牙にひびが入り、そこから虫歯になる場合や、歯周組織が強すぎる力によって破壊される場合も少なくありません。また、レジン(樹脂)やセラミックの破折、クラウン(被せ物)の脱離を招きます。顎関節症や開口障害を引き起こすこともあるので、歯ぎしりに対する対策をしっかり行うようにしましょう。
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噛み合わせの調整は歯を削りますか?それ以外の方法はありますか?
噛み合わせの調整は歯を削るだけでなく、歯に材料を付与して盛る事もあります。
また、すでに装着されている被せ物や詰め物を外して、新たに適正なものを被せ直したり詰め直すこともあります。さらに顎関節の位置を正しい位置に誘導して、噛み合わせを正しい状態に導くこともあります。安易に削るばかりの調整は避けるようにしてください。
最終的な噛み合わせの調整においては、顎関節の位置が正しい位置にあり、顎の開閉運動に障害が無い状態で行う必要があります。
顎関節の位置や顎運動に問題がある場合は、いったん正しいとされる一時的な位置でリハビリテーションを行い、安定した後に最終的な噛み合わせの位置を求めるようにしましょう。
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噛み合わせがいいとどんないいことがありますか?
良いかみ合わせは、虫歯や歯周病を予防し易くし、咀嚼能率が上がることで胃腸への消化負担を減らします。また、顎関節の安定を導き、頭部の重心バランスが安定することで身体全体のバランスが向上し、身体の可動、連動を最適化します。
良いかみ合わせは咬合力を適度に分散するので、就寝時の歯ぎしりや食いしばりによる影響を受け難くします。さらには頸部の血流やリンパ流が整いやすくなることで自律神経を安定させます。
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顎関節症と嚙み合わせは関係があるのでしょうか?
歯科医師によって意見が分かれますが、ある場合と無い場合があります。
歯の噛み合わせは、顎関節の位置や動きに対して相互関係にあり、歯科治療においてはお互いに無視できない関係でもあります。
顎関節の運動障害や痛みは悪いかみ合わせに起因する場合が少なくないのですが、顎関節組織そのものに問題がある場合は嚙み合わせとは無関係に顎関節症を発症することもあります。つまり、良い噛み合わせであっても顎関節症が生じることがあるということです。
生まれつき顎関節の形状に問題がある場合や、日常の生活習慣に問題がある場合もあります。いずれにせよ、正しい診断のもとに治療を行う必要があり、診断を間違えると悪化することもあります。顎関節症の診断と治療法は歯科医師の経験値と能力によって異なるので、不可逆的な治療をいきなり行うのではなく、まずは可逆的な治療から始めるようにしてください。