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40代女性 抜歯後の欠損部を、部分矯正を用いて親知らずの移動で治療した症例(インプラント治療の代案)

年齢と性別 40代女性
ご相談内容 「抜歯後にインプラント治療を検討しているが、それ以外の方法はないですか」とご相談いただきました。

カウンセリング・診断結果 右上7番を歯牙破折(割れたり、折れたり、ひび割れたりすること)により抜歯した患者様でした。
診察したところ、インプラント治療を行うための十分な骨量を認めるとともに、後方に埋伏している智歯(親知らず)を認めました。

行ったご提案・治療内容 7番(第二大臼歯)の抜歯後は、基本的に後方に植立のよい8番(第三大臼歯)がないとブリッジを選択できません。また、後方延長ブリッジはトラブルにつながりやすいため、通常はインプラント、または部分入れ歯の選択となります。
ただし、植立の良い8番がある場合や、たとえ埋伏状態でも部分矯正で親知らずの移動が可能な場合は、時間と手間はかかるものの、天然歯による歯列、噛み合わせを再現できるメリットがあり、入れ歯やインプラントに比べて圧倒的に優れていることをお伝えしました。

入れ歯の利点は、治療期間が最も短く、治療費がもっとも低く抑えられること。欠点は、入れ歯の大きさによる不快感や、天然の歯のように強く噛めないことです。
インプラント治療の利点は、天然の歯のように噛めること、欠点は治療期間が長くなること、治療費が高くなること、他に比べてメインテナンスコストがかかることをお伝えしました。

部分矯正は、治療期間がインプラント治療と同じくらいかかる上に、矯正器具を長期間使用しなければならないので、その間の不快感や違和感があります。ただし、治療後は、天然の歯と同様に予防管理ができること、治療費もインプラントより低く抑えられることをお伝えしました。        

協議の結果、矯正治療による歯牙の移動をご希望されました。

治療期間 1.5年
費用 25万円
術後の経過・現在の様子 術後は歯の後戻りはなく、噛み合わせも安定しています。
治療のリスク 歯を動かす際に、固定源を何にするかによってリスクは異なりますが、今回は右上4番~6番を一括固定し、それを固定源としました。
8番を7番の位置まで牽引する際、4番~6番が8番に引っ張られて4番の近心コンタクトが空いてしまう可能性があります。そのため固定源とする歯が、本来の位置から動かないように矯正力を適切にかける必要があります。

また、牽引する8番にも適切な矯正力をかけなければ、移動に余計な時間がかかってしまったり、歯周組織の破壊を伴ったりする恐れがあります。

矯正装置を付与することで、食物が停滞しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが上がります。そのため日常の歯磨きは、丁寧かつ、回数をおろそかにしないことが大切です。

移動完了後は歯の後戻りを防ぐために、噛み合わせの管理を定期的に行う必要があります。

治療前

 

治療後

 

8番は埋伏していたため、炭酸ガスレーザーにて開窓し、矯正装置を付与できるようにしました。牽引ゴムで少しずつ移動させ、移動期間は炎症が起きないように定期的に清掃しました。周囲組織にダメージがおよばないように、矯正力を調整して適切な移動スピードを保ちました。

歯科治療にはいろいろな選択がありますが、何より大切なことは、医学的に正しいか以上に、患者様が何を求めているかです。どんなに優れた治療であっても必ずリスクや負の側面があります。
治療後に得られる利益と、そこに至るまでの不利益を、どうしても天秤にかけなければならないときがあり、目先のことにとらわれがちですが、まずは正しい知識と自分が本当に求めているものを知ることが何より大切です。

今回は部分矯正を選択しましたが、患者様のご希望によってはインプラントでも、入れ歯でも可能な治療でした。何が優れているか?ではなく、何を求めているか?で治療をご選択いただくのがおすすめです。