精密根管治療
歯の中にある神経を取り除く治療や、過去に神経を取り除いた歯の根の先に膿がたまった場合に行う治療を「根管治療」といいます。
根管治療には保険適用可能なものとそうでないものがあります。
より精度の高い根管治療を行うためにはマイクロスコープ等の最先端技術を使用する必要がありますが、これらの最先端技術は非常に有用である一方で国が定義する保険診療内容がそこまでカバーしきれていないことが原因です。
根管治療の内容をこのページ内で執筆しておりますのでご覧ください。
また、マイクロスコープを用いた精密根管治療に関しては専用ページを設けておりますのでご覧ください。
また、保険診療と自由診療の違い等は料金表のページで詳しく説明しておりますので、併せてご確認頂ければと思います。
根管治療について
虫歯菌が歯の神経に達した場合、神経を取り除かなければなりません。
また神経を取り除いた後にも、いろいろな原因で歯根の周りに細菌の感染が起こることがあります。
この場合もやはり神経を取る場合と同じような治療が必要になります。
歯の中にある神経や、感染している部分を取り除きながら、薬を用いてきれいにしていきます。症状に応じて薬を選択、交換していきます。
症状が落ち着き、きれいになったところで、ガッタパーチャ(天然ゴム)というものを詰めます(根管充填)目にみえないところなので、治療の良し悪しがわかりにくいこともあります。
根管治療は症状によっていろいろなパターンがあります。少ない治療回数で終わるものもあれば治療期間が長くかかるものもあります。
根管内の感染している状態や、免疫力、用いる薬との相性などによって治療経過や結果が変わってきます。
治療内容
患者様にとって、根管治療の内容は一見とてもわかりづらいものです。
分かりやすく言えば虫歯治療の延長として抜髄があり、抜髄後の経過不良として、感染根管処置があります。
どの時点で根管治療を行なうかどうかは歯科医師が判断します。(歯科医師や症例によって微妙に判断が異なることがあります。)
まず、根管治療に踏み切る理由を、患者側がよく理解できていなければ、根管治療に対する疑問を抱いたまま治療を受ける可能性があります。
特に治療期間中痛 みや不快感がなければ良いのですが、もし、痛みや不快感があったり、治療期間が長くかかってしまうと不信感をつのらせてしまうかもしれません。
根管治療において患者様が気になるポイントは、痛いか痛くないか、あるいは治療期間が一体どれだけかかるのか、さらに治療後には再発するか、しないかだと思います。
ところが、根管の中はとても見えづらく、治療は術者の勘に頼る部分もあります。
さらに、用いる薬との相性や、患者本人の体調や免疫力によっても経過が変わってきます。
治療期間中の症状のコントロールには、患者側の理解と同意も必要となってきます。
完璧な根管治療を行なおうとすれば、実のところ一回あたりの時間とコストが大きくかかります。
残念なことに現在の保険制度では十分に対応できない場合もあります。(ですから虫歯の早期発見が大切なのです。)
どこまでを完璧とするかは歯科医師によっても異なりますが、本当の意味で治療が成功したかどうか判断できるのは何年も先になります。
よって本当に良い根管治療が行なえたかどうかは判断が難しいところです。
良い根管治療とは
- 治療中、治療期間中にはできるだけ痛みを伴わない。
- 症状が何度も繰り返さない。
- 日常を快適に過ごせる。
- 治療後の再発がない。
ということが、私にとって良い治療の目安と考えます。
最近ではCTやマイクロスコープを用いて精密に行なう根管治療の専門医も登場してきました、素晴らしい時代がやってきたと思います。
また、歯科医師によって考え方は様々です。
昔の歯科医師といまの若い歯科医師でも、根管治療に対する考え方は少し違う事もあります。
ただし、どちらがいいかということではありません。
長い経験からわかることも、最新のテクニックも、昔ながらのテクニックのどれもが必要であり、患者の病態や状況によって使い分けたり、ミックスするセンスが必要です。
根管治療はよほど重篤なケースでないかぎり、大抵は3〜5回程で終わります。
ただし、病態によっては一回で終わることもありますし、5回以上かかることもあります。
一昔前は、根管治療の通院だけで半年近くかかることもありました。歯科医師それぞれの得意な方法がありますから、事前によく相談されることをお勧めします。
診療室で直接、「痛みはどのようにでますか?」「何回ほどかかりますか?」と尋ねてみるのもいいと思います。
私の知る限り、根管治療に自信のある歯科医師は、事前に治療内容や痛みの出るポイント、治療回数の目安などをきちんと提示してくれるものです。
歯科医師の腕が良いかどうかは、根管治療を見ればわかるとまで言われています。
また、患者様の体調によっても、治療経過が変わりますので、重篤な場合は特に、根管治療期間中はあまり無理をされないことをお勧めします。
また、初めから治療後の経過が良くないであろうと予測された場合は、根管を一部切除するなどの外科的処置を行うことがあります。
いずれにせよ、歯科医師と相談して、方針等をよく理解した上で治療を行なうことをお勧めします。
根管治療とマイクロスコープ
次にマイクロスコープを使用した精密根管治療についてご説明致します。
マイクロスコープを用いた治療歯、医科の分野では、その歴史は古く1920年代から使用され始め、1950年代には、耳鼻咽喉科、1960年代には、眼科、脳神経外科、血管外科等の分野で使用されてきましたが、歯科の分野では、非常に歴史は浅く1990年代に入ってから主に根管治療において用いられるようになりました。
マイクロスコープを用いることで、一般的な根管治療よりも、精密で安全な根管治療が行えるようになり、病気(根端性歯周組織炎)の再発を最大に予防できます。また、歯の中の状態を動画や画像として見ることもできます。
根管治療を成功させるために
根管治療を成功させるための大切なポイントは2つあります。
- 歯科医師が病態についてきちんと把握している
- 根管治療を、適切な環境下で行う
歯科医師が病態をきちんと理解するためには、問診、視診、触診、レントゲン診断などがありますが、マイクロスコープは視診においてその力を発揮します。
根管内はとても狭く暗いので、肉眼で覗くには限界があります。
歯科医師は、手の感覚やレントゲン写真を頼りに治療を行うしかなく、肉眼では直接見えない状況で治療を行うことが、これまでの一般的な根管治療です。
見えない状況で治療を施すとなると、歯科医師の技術や症例によって、治療の確実性が大きく左右されることになります。
それゆえ、本来助かるはずの歯が「抜歯」と判定されてしまうことも少なくありません。
マイクロスコープを用いることによって、根管内を直接拡大して見ることができるので、根管内がどういう状況なのか?について、歯科医師が理解しやすくなり、病態をきちんと把握することにつながります。
また、根管治療を進める途中で、様々な確認が可能になるため、治療そのものが安全かつ確実に行い易くなります。
これはつまり、根管治療を適切な環境下で行うことになります。
マイクロスコープを使用することで、歯科医師の“勘”や“経験”だけに頼ってきた治療ではなく、これまで不可能だった高度なレベルの治療を行うことができるようになるのです。
当院の精密根管治療
当院のマイクロスコープには、カメラを設置しており、根管内の画像及び動画を見せることができます。
治療前、治療後の根管内を患者さんに見ていただくことで、歯科医師と患者さんが情報を共有できるようになり、お互いが共通の認識のもとに治療を進めることができるようになります。
全ての根管治療において、マイクロスコープを用いることが理想的ですが、2つの注意点があります。
一回当たりの治療時間が長くなる(30~90分)
拡大することで、細部まで見えてしまうわけですから、治療が精密で丁寧になる代わりに、治療時間が長くなってしまいます。一回当たりの治療時間は60分~90分を目安にしてください。
ただし、長い間口を開けていられない方の場合は途中で休憩を入れながら行うことも可能です。
また、一回当たりの治療時間は長くなりますが、集中して治療を行うため、治療回数は一般的な根管治療よりも少なくなります。
保険診療では行うことができない。
保険診療(一般診療)とは、国が定めたルールに基づいて行われる診療です。
そもそも、医学がこれだけ進歩したにも関わらず、保険診療の概念は30年前からほとんど変わっていません。
歯を予防したり、できるだけ歯を残すための制度というよりは、痛みや症状を取り除くことを主軸に設定されています。歯科医療費に使われる国の予算も20年前から全く変わっていません。
つまり、保険診療は今から何十年も前の考え方に基づいて設定されていると考えられます。
ちなみに、「ラバーダム」という、根管治療を成功させるための器具があるのですが、ラバーダムを用いた場合と用いない場合では、治療の成功率が大きく変わるという統計もあります。にもかかわらず、保険診療ではすでにこのラバーダムを保険算定枠から外してしまいました。
アメリカではこの器具を使う事が当たり前だとされていますが、日本ではそういう歯科医は非常に少ないのが現状であり、保険制度の兼ね合いがあり複雑な状況になってしまっているのです。(保険診療と自由診療について)
マイクロスコープを用いた精密根管治療は、用いる器具や材料だけでなく、治療工程の規格そのものが保険診療と異なるので、自由診療となります。
多くの方にとって保険診療はひとつの基準となっていますが、このような背景を理解して頂いたうえで、あなたにとって正しい選択をされてください。
精密根管治療の費用と治療期間の目安
抜髄処置
上下顎中切歯 側切歯 | 33,000円 (治療回数の目安1回~2回) |
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上下顎犬歯 | 44,000円 (治療回数の目安1回~2回) |
上顎小臼歯 下顎小臼歯 |
66,000円 (治療回数の目安1回~2回) 55,000円 (治療回数の目安1回~2回) |
上下顎大臼歯 | 110,000円 (治療回数の目安1回~3回) |
感染根管処置
上下顎中切歯 側切歯 | 55,000円 (治療回数の目安1回~2回) |
---|---|
上下顎犬歯 | 66,000円 (治療回数の目安1回~2回) |
上顎小臼歯 下顎小臼歯 |
110,000円 (治療回数の目安1回~3回) 66,000円 (治療回数の目安1回~2回) |
上下顎大臼歯 | 165,000円 (治療回数の目安3回~5回) |
精密根管治療の治療期間は各症例によって変動します。炎症の状態や、治療介入するタイミング、本人の体調や諸事情によって変動するので、具体的な治療期間は診査、診断後に治療前にお伝えさせていただきます。 | |
(注)マイクロスコープを用いた精密な治療を行います。 治療を開始しても、歯に亀裂、治療不可能な穿孔の発見等で、予後不良が見込まれた場合は治療を中断します。その場合、費用は発生しません。 ラバーダム防湿を用い、根管治療小器具は、全て新品を使用します。充填物の除去から、根管充填までの費用となります。新しく作成する被せ物は、別途費用が掛かります。 一回の治療時間の目安は60分~90分とします。 根管治療は根の状態によって治療の成功率が左右されます。マイクロエンドにより、 治療精度は上がりますが、やむを得ず抜歯になる場合もあります。 |
精密根管治療のよくある質問
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ラバーダムって何ですか?本当に必要?
ラバーダム防湿法とは、治療する歯のみをゴムのシートで隔離し、細菌が入らないようにし、さらには器具の誤飲などを防ぐために行う方法です。
口の中には多くの細菌が繁殖し、唾液の中にも多くの細菌が混在しています。
唾液が、根の治療中に根の中に侵入してしまうと感染を広げて治療の治りを悪くしてしまうので根の中の治療を無菌的に行うための治療方法がラバーダム防湿法です。
虫歯治療にもラバーダム防湿法を行うことがあります。
接着面をしっかり乾燥させることで、接着を強固にし、充填物や装着物を長持ちさせることにつながります。
ただし、デメリットもあります。ラバーダムを用いることで、患者さんが息苦しくなることもあり、ゴムアレルギーの方には用いることができません。そして、ゴムシートが張られることで、治療器具の可動域が狭くなり、症例によっては治療が困難になる場合もあります。ここで大切な事は、ラバーダム防湿はとても大切な概念ですが、ラバーダムが絶対だという事でもありません。ラバーダムを行っても、そのほかの根管治療の手技がきちんとできていないと意味がありません。また、症例によってはラバーダムがほとんど必要ない場合もあります。ラバーダムにこだわりすぎて、他の大切なことが疎かになるのは本末転倒です。
まず根管治療前に、きちんと口腔内を清掃し、根管治療の基本原則を守ること。ラバーダム以外にも重要な手技、治療方法はたくさんあります。ラバーダムはあくまでも基本原則の一因子にすぎません。ラバーダムを行うから大丈夫だと安直に考えないようにしてください。 -
精密根幹治療のデメリットはありますか?
一回当たりの治療時間が長くなり、治療費用が保険診療に比べて高額になります。
時間をかけた丁寧な治療になるためです。
長時間の診療が身体に負担をかけてしまう場合には、一回当たりの治療時間を短くして通院回数を増やすのが良いでしょう。
また、高額な治療費をかけて治療したとしても、治療後の歯の生存率は100%ではありません。一時的に改善したとしても数年後に再感染、または歯の破折を生じることもあります。精密根管治療の方針や技術力、治療後の保証制度などは各クリニックによって異なるので、治療を行う前に担当の歯科医師と成功率や治療後の注意点などについてきちんと話し合ってから始めるようにしてください。 -
精密根管治療は何回くらい治療が必要ですか?
症例(疾患の程度や患者さんの都合など)にもよりますが、当院では前歯で1〜2回 小臼歯で2〜3回 大臼歯で(3回〜5回)がおおよその目安です。治療時間は一回につき60分とします。ただし、これはクリニックによって異なります。歯科医師の方針や治療方法によって異なります。
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現在、歯の痛みで悩んでいます。セカンドオピニオンだけでも可能でしょうか?
もちろん可能です。当院では患者様に正しい歯科情報を持っていただく事を最も大切にしております。治療の選択はあくまでも患者様の考えに基づいて行って頂きたいと考えております。
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以前他の医院で根管治療をしてもらったのに痛むのはなぜですか?
一概に根管治療といっても、歯科医師によって方針や技術力は大きく異なります。
また、歯科医師にその技術があったとしても地域によってはその実力を発揮できない場合もあります(一日の来院患者数が多すぎて患者さん一人当たりに使える時間が少ない場合や、クリニックの経営方針の事情など)特に、保険診療における根管治療は、あくまでも痛みを取り除くことを主軸に考えており、長期にわたって歯を保存するための治療制度にはなっていません。結論から言えば、保険診療でおこなった根管治療はそのほとんどが再治療、または抜歯の対象となります。
日本の根管治療は、いまだに50年前の治療方法を行っています。
歯科医療が発達し、治療方法が進化したにもかかわらず、全国的に50年前の概念で歯科治療が行われている現状があります。
また、根管治療の成功率は、最初に治療を行ったタイミング、かみ合わせの状態、疾患の程度、患者本人の免疫力、日常の生活習慣によって大きく左右され歯科医師の技術力だけではどうにもならない場合もあります。
根管治療に限らず、歯科治療を成功させるためには、患者様本人の協力も必要です。
痛みの原因を明らかにし、計画性をもって治療することが重要です。 -
治療期間中痛みが出ることはありますか?
計画的に治療を行えば、治療期間中の痛みはほとんどありません。
精密根管治療は根管内を視覚で捉えながら治療を行うので、痛みの起こる可能性や、治療期間中のリスクを予め予想し、必要に応じて抗生剤や鎮痛剤で痛みを最小限に抑えることができます。
ただし、治療期間中に体調を崩してしまうと、痛みが発現することもあるので、根管治療中は体調管理を心がけて下さい。
治療期間中の飲酒や過度な運動は炎症を助長させることになります。炎症の進行度、感染の範囲によって痛みのリスクが変動するので、治療期間中は、歯科医師の指示を必ず守るようにしてください。