• ホーム
  • 症例ブログ
  • 50代女性「前歯にある隙間を改善したい」前歯のダイレクトボンディングで治療した症例

50代女性「前歯にある隙間を改善したい」前歯のダイレクトボンディングで治療した症例

年齢と性別 50代女性
ご相談内容 「前歯にある隙間を改善したい、何か良い方法はありませんか?」とご相談いただきました。

カウンセリング・診断結果 診察したところ、左上1番と2番の間に2mm弱の隙間があり、上下顎前歯は密に咬合(噛み合わせ)している状態でした。
行ったご提案・治療内容 前歯の隙間の原因は、奥歯を含めた歯列不正でした。根本的な解決方法としては、上下額を含めた全額矯正が理想的であること、部分矯正での対応も可能であるものの、前歯の機能性が損なわれる可能性があることをお伝えしました。
また、他の方法として、
①ラミネートべニア(歯の表面を薄く削り、付け爪のような薄いセラミックを歯の表面にくっつける治療法)
②オールセラミッククラウン
③ダイレクトボンド法(多種類の審美修復用プラスチックを直接お口の中で盛りつけていき、天然歯のような美しい色調や本来の歯の形態を回復させる治療法)
のそれぞれについて利点、欠点を踏まえてご説明しました。

協議の結果、患者様はダイレクトボンド法を選択されました。そのため、歯は削合せず、左上1番と2番それぞれに接着のみを行うダイレクトボンディングを行いました。
材料の性質上、天然の歯に比べて着色しやすいので、あえて歯の色より少し白い色を選択しました。施術1週間後に、食物の圧入や周囲歯肉に炎症が無いことを確認しました。定期健診時には、材料の劣化や周囲歯肉の炎症の有無の確認を必ず行うことをお伝えしました。

治療期間 当日完了(45分)
費用 60,000円
術後の経過・現在の様子 発音にも影響なく、食物の圧入、周囲歯肉の炎症も認められません。
3年以上を経た現在も、問題なく使用できています。
治療のリスク ・維持力を接着のみに依存しているため、長期的視野で考えれば、脱離、破折の可能性は他の治療法に比べて高くなります。

・コンポジットレジンは樹脂ゆえに他の材料に比べて劣化が早く、耐摩耗性も低い素材です。ただし、天然歯を削らないため、歯への侵襲は最も少なく済みます。外れたり破折(割れたり、折れたり、ひび割れたりすること)したとしても、再治療は容易です。

・歯冠を無理に延長した構造であり、本来の歯と歯周組織の関係とは異なるため、自浄性が悪くなることがあります。日常の管理が悪いと、周囲歯肉の炎症や虫歯になるリスクが高まります。そのため、定期健診にて問題がないかを必ず確認する必要があります。

・強度は低いため、前歯で硬い食物を噛むときは注意する必要があります。

治療前

治療後

このようなケースでは、医学的に正しいかよりも、患者様が何を望んでいるのか?が判断の中心になるべきです。
矯正治療は理想的ではあるが、治療期間や費用が大きくなります。また、ラミネートやオールセラミッククラウンは歯を削合しなければなりません。
噛み合わせの状態や日常の習癖次第で、それぞれに利点欠点があるため、一元論で考えるのではなく、多角的に考えて選択することが必要です。

また、歯を削ることを悪いように捉えている方がいらっしゃいますが、歯を削るか削らないかを議論する前に、将来のリスクをどのように考えるのか?を最初に考える必要があります。
削らないことで強度不足や破折のリスクが上がるのであれば、しっかり削って、被せものの維持力や支持力を獲得する方が良い場合もあります。
つまり中途半端にダイレクトボンディングをするのではなく、ラミネートやオールセラミックを選択する方が賢明な場合もあります。

患者様にはそれぞれ価値観があることも事実ゆえ、心理的にどうしても削りたくない気持ちも正しいと言えます。ダイレクトボンド法は、基本的に他の治療に比べてハードルが低く、まずは試してみたいという患者様に向いています。
審美回復、機能回復をまずはダイレクトボンディングで実現し、長期的にどうしても安定しないと判断された場合は、他の治療法に変更することも可能です。