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インプラントの手入れ・寿命~インプラントを長持ちさせるには~

目次

  1. インプラントを長持ちさせるための条件
  2. 生活習慣の注意点
  3. 歯科医師の治療方針に注意
  4. 寝たきりになってしまうと大変!?
  5. インプラント周囲炎にご注意を
  6. インプラントの緩みと脱落
  7. インプラントの寿命

1.インプラントを長持ちさせるための条件

顎骨に埋入されたインプラントは、その周りの組織(骨、血液、組織液、歯肉 )によって維持されます。つまり、インプラント周囲の組織に異常や問題が生じてしまうと、インプラントは異物とみなされて、顎骨から抜け落ちてしまいます。
インプラントそのものより、その周りの組織のほうが重要だということです。
インプラントの種類、各構造によっても耐久性や長期安定性の多少の違いはありますが、一般的なインプラントであれば、ほとんど差異はありません。
つまり、インプラントを長持ちさせるためには、日頃からインプラント周囲の組織条件を整えて置く必要があります。

歯の周りにある組織を歯周組織と言います。
インプラントの周りにある組織は歯周組織とほぼ同じですが、一つだけ無いものがあります。それは「歯根膜」です。天然の歯には歯根膜があり、歯は歯根膜を介して骨と結合しています。つまりこれが歯と骨をつなぎとめる役割を担っています。
また、歯根膜には様々な機能があり、わかりやすく言えば、歯周組織を再生する力を持っています。歯根膜に問題が生じてしまうと、歯の周囲の骨が失われて歯が脱落します。
インプラントには歯根膜が無いので、骨と直接結合しています。歯根膜が無いので、インプラント周囲組織を再生する力はありません。ゆえに、天然の歯よりも、周囲組織の破壊のスピードは速くなるということと、自覚症状が出にくい傾向があります。

歯もインプラントも、それぞれの周囲にある組織の破壊が起きると、生存率が下がります。
周囲組織を破壊する要因は大きく分けて3つです

  1. 細菌 口の中がきちんと清潔に保たれているかどうか?
  2. 過重負荷(強すぎる力がインプラントにかかっていなか?)
  3. 全身疾患(糖尿病や骨粗鬆症などがないか?)

この3つについて詳しく語ると理解するのが難しくなるのでここでは簡単に説明します。

食後にきちんと歯を磨かないと、インプラント周囲に食物の残渣が停滞し、最近の活動が活発になります。これがインプラント周囲組織の破壊を招きます。
また、インプラントに強い力がかかり続けてしまうと、インプラント周囲の骨が吸収し、インプラントを支えている骨が減少してしまうのです。
糖尿病や骨粗鬆症は、インプラント周囲組織の代謝が不安定になり、周囲組織自体を維持することが難しくなります。また、喫煙はインプラント周囲組織の血流を悪くするので、周囲組織のコンディション低下をもたらします。

このことは、インプラントだけなく、天然の歯にも同じことが言えるため、
これまでの生活習慣や歯に対する配慮を改善しない限り、インプラントも同様に失う恐れがあるということです。

特に気を付けていただきたいのは、インプラントへの過重負担です。
これはなかなか自覚することができません。インプラント治療終了後はかみ合わせが正しくとも、天然の歯は少しずつ咬耗しながら噛み合わせが変化します。この時、インプラントの上部構造(歯の形をした部分)は歯と硬さが異なるため同じように咬耗できません。
つまり、時間が経つほど、インプラントへの負荷が大きくなり、気づかないうちにインプラント周囲の骨が減少する可能性があります。
これを予防するためには定期的に噛み合わせの確認と調整が必要になります。痛みや違和感を自覚する前に行うことが大切なので、必ず定期健診を受けるようにしてください。

実は、少し話がずれますが、このかみ合わせのズレはインプラントのみならず、歯の詰めものや被せ物も同様で、歯の治療を行うことで、遅かれ早かれ咬み合わせは崩れていくことは必須であり、それにより、歯周病や顎関節症を誘発する大きな原因となっています。
つまり、歯に詰め物や被せ物を装着した場合、必ず神汗の管理を定期的に行う必要があるのですが、これについておほとんどの歯科医師は患者さんに伝えません。
歯の治療そのものが歯の疾患を生み出しだしている現実を多くの患者さんは知りません。
歯を治療すれば大丈夫ではないということを覚えておいてください。

2.生活習慣の注意点

長期的な視点で言えば、
食事の内容、歯磨きの回数と技術はインプラントの生存率に直結します。
糖の過剰摂取は、糖そのものが虫歯菌の活動を助長し、唾液の分泌量と唾液中に含まれる抗体の量を減少させ、歯周病菌の活動を活発にします。
食物の残渣(食べかす)が口の中で長い時間放置されることで、歯周病菌が増殖しやすくなり、インプラント周囲組織の炎症を引き起こしやすくなります。
また、食いしばりや歯ぎしりは、インプラントに過重負担をかけてしまうので、
就寝時にマウスピースを装着することで、インプラントに対する負担を軽減できるようになります。
特に、喫煙は、インプラント周囲の血流を悪くするのでできるだけ避けるようにしてください。また、上下の歯と歯は、基本的に食事以外では接触しませんが、覚醒時においても、無意識に接触させ続ける方が少なくありません。
これを上下歯列接触癖(TCH)と言います。TCHは、様々な問題を引き起こします。
顎関節症 歯周炎、インプラント周囲炎 補綴物の破損 
インプラント上部構造の破損、インプラントねじの緩み 
くさび状欠損 知覚過敏 歯根破折 口内炎頬粘膜の誤咬などがあります。
上下の歯と歯が自然に離れているようにするためには、舌を口蓋(上あごの中央)に軽く触れている状態にしなければなりません。舌の位置を正しい位置に置き、上下の歯と歯を少し離しておくことを心がけてください。

3.歯科医師の治療方針に注意

インプラントメーカーは多く存在しますが、インプラント自体に大きな相違はありません。
インプラント形状や性状の違いはあれど、基本概念はだいたい同じです。
ところが、インプラントを扱う歯科医師となると、インプラント治療に対する考え方の違いが各歯科医師に違いが生じてきます。これは良し悪しという意味ではなく、患者さんのニーズによっても変化するからです。治療方法や、治療方針にも様々なスタイルがあるため、
治療に対する考え方、各治療法の注意点、リスクについて、担当医に必ず事前説明をしてもらうことをお勧めします。その治療方針が、あなた自身の方針に沿っているかどうかを、
確認するようにしてください。
説明が良くわからない場合は、セカンドオピニオンを受けるようにしましょう。

4.寝たきりになってしまうと大変!?

インプラント治療において問題とされるテーマの一つとして、老後に寝たきりになってしまったら、自分で口腔ケアをできないからインプラントではなく着脱可能な入れ歯にするべきだという意見があります。これは確かに一理あります。この判断については、様々なケースがあるので、一概には言えませんが、自己管理ができない事を想定するのであれば、
インプラントより入れ歯の方が手入れしやすいことは確かです。ただ、それはご自身の歯についても同じことが言えます。インプラントのみならず天然の歯も同様に、日常のケアを怠れば、歯周病にかかりやすくなり、様々な問題につながります。
将来的に自己管理が難しいことが想定されるのであれば、インプラントではなく入れ歯を選択することも有効です。同時に、自己管理をきちんと行える自信があるのであれば、
インプラントを選択することも有効となります。入れ歯とインプラントを併用した方法もあります。いずれにせよ、将来を見据えた選択をするようにしてください。

5.インプラント周囲炎にご注意を

インプラントを生涯しっかり持たせるためには、インプラント周囲の組織を健全に保つことが必要不可欠です。インプラント周囲にプラーク、バイオフィルムが定着することで、
周囲組織の炎症を招き、しいては、周囲骨、周囲歯肉の炎症と減少を招きます。
インプラント自体がどんなに丈夫でも、周囲組織の破壊が起きてしまうと、インプラントの脱落につながります。つまり、インプラント周囲の組織に炎症を起こさないことが
インプラントを長持ちさせる秘訣です。
軽度の周囲炎であれば、治療によりリカバーできますが、重度の場合は治療しても
改善できなくなります。その場合は、インプラントを撤去しなければなりません。
多くの型が、治療が終われば大丈夫だと考えますが、そうではありません。
インプラントは治療後の予防管理をきちんと行わないといろいろな問題につながります。
インプラント治療後は、歯科医師、歯科衛生士の指導の下に、予防習慣を実行するようにしましょう。

6.インプラントの緩みと脱落

インプラントを止めるネジはそうそうに緩むものではありませんが、
ネジの締め忘れや、噛み合わせの状況等次第では上部構造が装着された後に
上部構造のガタつきが生じることがあります。そのまま放置してしまうと、
上部構造と歯肉の間に大きな隙間が生じ食物が流れ込み、停滞するおそれがあります。
これが歯肉の炎症を生じ、痛みや腫れにつながります。
上部構造の緩みに気づかないまま、使用してしまうと歯肉の変化を生じ、
上部構交換を余儀なくされるので注意しなければなりません。
また、ネジが緩んだままインプラントを使用すると、ネジやインプラントの破折にもつながります。きちんと治療されたインプラントであればネジの緩みはほとんどありませんが、絶対にないとも言い切れません。定期健診で上部構造の緩みが無いかどうか確認してもらいましょう。

7.インプラントの寿命

インプラントは一生持ちますか? と聞かれることが少なくありません。
この問いに公正に答えるならば、答えは「わかりません」となります。
なぜなら、一生持つかどうかは、インプラントそのものの判断ではなく、患者さん自身の在り方によるからです。
インプラントを確立させる環境が生涯にわたり維持できるのであれば、インプラントは一生持つことになります。
つまり、インプラント治療時の条件と、治療後の管理予防、全身疾患の有無等が治療後の維持に大きく関わるということです。
インプラント治療時の必須条件をきちんと満たしておくこと。
治療後も管理予防を怠らない事。
インプラントの寿命はこの2つの要項に委ねられるということです。
インプラントは一生持ちます。などと、無条件で発言する歯科医師には注意してください。
また、インプラントは危険だと、前提条件について説明もなく発言する歯科医師も同じです。
インプラントが良いか悪いかではなく、どのような場合に適していて、どのような場合に適していないのか? を語る歯科医師をお勧めします。
インプラントを長持ちさせるためには、インプラントについて正しい知識を持つことが大切です。また、各個人の様々な事情や考え方、ライフスタイルがあるので、全てを理想的に実践することは難しいかもしれません。
歯を失った原因を理解し、同じ事にならないよう、習慣と意識の改善を行い、歯科医師、歯科衛生と連携して、共に守るつもりで予防管理することで、インプラントは生涯にわたり機能します。
歯科治療全般に言えることですが、治療完了はゴールでなく、むしろスタートなのだということ認識していただければ幸いです。

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記事の著者:モウリデンタルクリニック 院長 毛利 啓銘

モウリデンタルクリニックは患者様の数十年後の健康を見据えた、総合的で一貫性のある歯科医療を提供するクリニックです。
特徴として、医学、科学に基づくだけでなく、患者本位に沿った総合的歯科医療を提案、実践しています。これは予知性を持った、合理的かつリスクの低い歯科医療です。
患者様には、問題の原因、歯科医療の本質について分かりやすく説明し、各予防法、各治療法について適切に選択して頂く事を大切にしています。

経歴/所属学会

■東京歯科大学卒業
https://www.tdc.ac.jp/
■日本口腔インプラント学会所属
https://www.shika-implant.org/
■ドイツ Ankylos Implant認定医
https://www.dentsplysirona.com/ja-jp/explore/implantology/ankylos.html
■ドイツ XiVE Implant認定医
https://www.dentsplysirona.com/ja-jp/explore/implantology/xive.html

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