偏る仕事
歯科医師という職業は、考え方が偏りやすい職業だ。
なぜか? 逆に考えてみよう。
考え方が偏りやすい職業とは?
想像してみれば簡単だ。
1 毎日同じ思考回路で考える
2 イレギュラーな局面が少ない
3 誰かに考え方を指摘されることがあまりない
4 失敗をしても自分以外のせいにしやすい
5 それが本心からかどうかは別として、尊敬される言葉や態度を毎日受ける。
6 新しい考え方を常に模索しなくても、安定した収入が得られる。
7 景気に左右されにくい
8 競争相手が少ない
9 既得権益的要素がある
10 環境の変化が少ない まだまだ沢山あるが、
これだけ挙げれば十分である。
これに当てはまる職業は他にもあるだろう。
こういった類の職業は、ある意味とても快適である。
なぜなら、何かに虐げられることもなく、
自分の好きなペースで努力をすればよいのだ。
誰かに押し付けられることもなく
、誰かに咎められることもない。
短期的観測をすれば、
これはまさに勝ち組といえる。
誰もがこんな職業に就きたいと思うのではないだろうか?
では長期的観測ではどうなるか? ?はっきり言ってまずい。
そんな生活を長く続ければ、
自分の正しさだけが思考の中心になり易くなる。
そんな環境で自分を律するのは、
なかなかできるものではない。
裸の王様になるだけだ。
他人が感じることを率直に言ってもらえる環境がなければ、
いつまでも自分の正しさを疑わなくなる。
人生が上手くいっている間は良いが、
上手くいかないとき、何を考えるか?
今までの成功体験を掘り起こし、
再現するのもいいが、
それが未来に適用できる根拠は乏しい。
同じ環境を再現することはできないからだ。
(実のところ、人は真理を理解するようにはできていない。
ただただ、環境に順応するのが精一杯である。)
浸みついた思考回路にできることに、
大した期待は持てない。
妙に偉ぶる歯科医師は、
だいたいこれに当てはまる。
過去と現在の栄光をちらつかせながら喋る輩に多い。
(謙虚さと柔軟性は便利な道具であることを忘れてはいけない
のだと、教えてくれることには感謝したい。)
歯科医師であるだけで、何もかもが保障される時代は、
とっくの昔に終わった。 一般の中小企業と同じく、
熾烈な市場競争原理に放り込まれていることに
歯科業界は最近になって気付いたのである。
さあ、どうする? 無責任な行政に不平不満を言い続けるのか?
それとも、時代のせいにして自分を憐れむのか?
どちらも無意味である。
自分自身、スタッフ、クリニックそのものが、
社会から必要とされる体質に なるしか生き残る道はないだろう。
偏った考えは危険だ。 そこに偏った考え方があると、
いろいろなものに固執してしまう。
問題を解決することが困難になり易い。
社会が変化するスピードは、ますます速くなっているのだから。
先に述べた10の条件は、今日までその職業の利点であった。
しかし今、その条件が、自らの怠慢を生み出し、
事業の存続を危うくしてしまうのではないだろうか?
偏らない考え方へのアプローチを模索しよう。
利点は欠点を生み、欠点は利点を生み出す。
絶対的価値観だけに基づくのではなく、
流動的、相対的価値観も併用していくのだ。
今はその後者の比率配分を大きくする時期だと考える。
歯科医師がいろいろなものによって守られて大切にされてきた時代の 終焉を迎えた今、
在り方が問われる時がやってきた。 存在理由を明確にするということだ。
今だけでなく、 未来の社会にも必要とされる存在のために、
何を考えて何をするのか?
今日も頭の中はぐにゃぐにゃ世界を駆け巡っている。 ?ぐにゃぐにゃと。