セラミック注意報
? 最近、前歯だけでなく、 奥歯にもオールセラミックを 希望する患者さんが増えてきている。
時代の流れであろう。
ここ2,3年で、オールセラミックの 加工技術は飛躍的に進化したといえる。
メーカーが破折に対する保証制度を設けたり、
極薄で丈夫なセラミックを開発したり、
もうこれでは、5年前の常識が今では 非常識になってしまう。
前歯の審美治療では、金属であろうと、 セラミックであろうと、
歯を削る量はさほど変わらないのである。
また、セラミックそのものに色を塗布する 技術のおかげで、
いろいろな色を 選択できるようになったことも事実である。
技術の進歩が格段に速くなっている。
だけど、僕はあるひとつのことを心配している。
セラミックを選択する患者が増える反面、
管理(噛み合わせの定期的な調整)をしない人が ほとんどだろうから、
単純理論的に考えれば、 将来、歯周病や顎関節症になる人は 今より増えるということだ。
(というよりは、いつまでも なくならないという表現が適切だろう)
セラミックの品質や加工技術が向上し、
その恩恵をだれもが受けられることの裏側には、
セラミックを管理する概念が必要不可欠である。
今の歯科界には、(一般的として) かぶせたものを長期間管理していく概念はない。
(クラウンのみ、たった2年の保証がついているだけだ。)
一般的には、 あくまでも入れたらおしまいである。
入れた後に、患者が何も言わなければ、 治療はそれで終わる。
患者が何か言うまで治療はしない。
(かぶせたものを調整して、問題を未然に防ぐ事をしない)
数年を経て何か言ってきたときには、
手遅れになることが多い。(元には戻せない)
こうして、治療の悪循環がはじまる。 入れ歯倶楽部が待っている。
<病気を治療する医療は盛んだが、 病気を事前に見つけたり、予防する医療はまだまだ発展途上である。>
セラミックを入れても、 管理をしなければ、セラミックはいつか割れてしまう。
もし、割れなければ、歯を支えている骨がだめになってしまう。
さらには、顎関節に問題がでる。 無理な力は必ずどこかにかかり続けるのだ。
もしセラミックを選んだのなら、
必ず定期的に噛み合わせの調整をしていただきたい。
(セラミックは歯よりもずっと硬いから。)
?せっかくのセラミックが将来の悪因にならないためにも。
ちなみに、 正直、銀合金を口の中にいれるのは、 心苦しいところがあるのだが。
視点を変えて考えてみれば、何を入れてもいいと思う。
入れる目的をどこに置くかが大切なのだ。
たとえ良いことであっても、
医療はおしつけたり、 脅したりするべきではないと思うのだ。 (ジレンマはありますけどね。)
歯に対する価値観は、 欧米にくらべてまだまだ低いゆえに、
全国規模でいえば、 銀合金を選択する人はまだまだ多い。
誰もが品質価値を感じるようになるには、
まだまだ時間がかかりそうだ。
何より大切なのは、 オールセラミックにするかどうかというよりも、
自分の口の中に何を用いるのか、その理由を よくよく考える機会を持って欲しいと思う。
その上で銀合金を選んだのなら、 それはそれでいいと思う。
僕の最初の仕事は、それぞれの正しい情報を伝えること。
その上で何を選んでもいいのである。
医療は、ただ受け入れる時代から、考えて選ぶ時代に向かっている。
Lets? think!!