ある衛生士へのエール
最近、とある衛生士さんからメールで相談を受けているのだが、
これがまた今時珍しく(こういう台詞はオヤジの始まりかも)
仕事に対して非常に熱心であり、
本質を見極めようとする姿勢はなかなかのものだ。
何より成長に必要な素直さを持っている。
今後相談を受けるに当たり、
ある程度知識と考え方のすり合わせをするために、
ここに僕の基本的な考え方を書き記して置くことにした。
これまでブログに書いてきたことと重複すること部分があり、
一般の方には少し難しい表現もあるだろうが、
あくまでも向上心ある衛生士に向けての、 メッセージととらえて頂きたい。
Mさんへ
歯科医師の仕事は、歯を治療する仕事でした。
歯科治療が日本国民に一般普及してから約40年。
歯科界は致命的なミスを犯しました。
予防ではなく治療を優先させ、
未来に対するビジョンを持たなかったあまり、
歯科医師の社会的地位は失われたのです。
治療に励みながらも、 多くの歯を助けることができなかったのです。
多くの歯科医師は、今日も歯科治療に励んでいます。
毎週行われるどこかの勉強会や講習会は、
歯科治療の内容のものばかりです。
歯科治療が一般普及してから、40年も経ったというのに、
歯科医の仕事は何も変わっていないのですよ。
虫歯を見つけて歯を削る。 歯磨き指導をしても虫歯はなくならない。
そのうち虫歯は神経に達し、 根管治療を行う。
根管治療を施された歯の何割かは、
いつの日か再発繰り返し、再び根管治療を行う。
治療を繰り返された歯はいずれ抜歯になる確率が上がる。
悪循環は今も続いています。
マイクロもルーペも使わない裸眼の根管治療は、
本当にセンスの良い歯科医師にしか良い成果は上げられない。
根管治療とは、一見問題を解決したかのように見えても
、 実は疾患の種を残していくようなものなのです。
気持ちは真面目に取り組んでも、
できないものはできない。 道具がなければできないことは多々あり、
それを根性で解決することは物理的に不可能です。
理想と現実ってやつですね。
歯科医師も患者も、
誰もが教科書通りの完璧な治療を 施す事も受けることもできるわけではありません。
卒後2年目のドクターと、
卒業20年目のドクターの 保険治療における診療報酬は 同じです。
これが何を意味するのか?
制度として、ドクターの技術は関係ないという事です。
ドクターの技術は保険制度として問わないという事です。
歯科医師免許と、保険医の資格さえあれば、
誰がやっても報酬は同じなのです。
という事は、 歯科医師免許を持っている 20代~70代の歯科医師の能力の平均が 、
この国の歯科医療の平均であり、
患者もまた、受け入れざるを得ない 現状が日本の歯科医療の現実です。
日本人は基本的に、 歯科医院に定期的に通う習慣がありません。
自分の口の中に対して、 あまり興味がない風習を持っているようです。
国民が歯科医院に行っている割合は、 2~3割という統計があります。
小学校や中学校で、 昼食後の歯磨きを義務付けている学校がどれだけあるでしょうか?
食後の歯磨きを、 子供に毎食後指導する親がどれだけいるでしょうか?
子どもの前で、 率先して歯磨きをする親がどれだけいるでしょうか?
口の健康において、 日本は途上国と言っても過言ではありません。
先進国と呼ばれた日本の、哀しき姿がそこにはあるのです。
歯科医師の技量が画一的に扱われる保険制度、
歯の健康について積極的ではない日本人の習慣 この2つが、
歯科医療の質に何をもたらすかは 想像に難しくありませんね。
歯科医療のこれまでの歴史と、現状からみれば、
車や家電、旅館やデパートに求められているような 技術やサービスを日本人はそもそも求めてはいないのです。
そのような解釈もならざるを得ないと思います。
僕の知り得る限り、素晴らしい歯科医師と、
素晴らしい患者で成り立つ歯科医院は存在します。
?歯科医師は日々研鑽を重ね、 医学的根拠に基づいた診療をし、
衛生士をはじめとする、
スタッフのフォローや対応も大変素晴らしく、
患者も歯を大切にする習慣を持ち、
定期的に歯科医院通う。
歯科医院と患者の関係はとても良好で、
互いが互いによって成長していく。
こういう歯科医院は確かに存在します。
ところが、圧倒的に少ないのです。
もしあなたが、自分の通っている、
あるいは勤めている歯科医院がこれに当てはまると感じたら、
本当にラッキーだと思います。
本当に小さな虫歯一本を、
CRで簡単に修復する程度なら、
どこの歯科医院でも同じかもしれません。
でも、そのむし歯が神経に達してしまい、
根管治療を施さなければならないとなれば、
ここから先は、 歯科医師のスタイルや技量で、
患者の未来は大きく左右されます。
また、 歯科医師は何かの治療だけが得意でも意味がありません。
歯科医療とは、そもそも総合力が問われるジャンルだからです。
何かの専門医であっても、
その歯科医院が専門外の治療を 並行して行うのであれば、
他の治療においても相応の知識と技術が必要です。
根管治療や歯周治療の専門医が、
咬合のエキスパートとは限りません。
少数歯欠損であっても、
ももともと咬合が安定していればさほど問題はありませんが、
多数歯欠損による咬合崩壊の場合、
根管治療や歯周治療だけ完璧にこなしても、
その先の治療が不十分であればすべてが台無しです。
最近では、インターディシプリナリーと称して、
各専門医が 連携をとる方法があります。
各分野のエキスパートが 一人の患者さんに対して連携して治療にあたる方法ですが、
難点は、誰が全ての責任をもつのか?という事です。
一人の患者に、歯科医師が多く介入すればするほど、 責任の所在は不明確になります。
問題なく治療が進めばいいのですが、
問題が発生したら誰がフォローするかは判断が難しくなります。
大学病院で各診療科をたらいまわしにされ、
治療がなかなか進まないケースを聞いたことがありませんか?
一つ間違えばこのようになる可能性があります。
各専門医で連携をとり、
一人の患者さんを複数の歯科医師で診療するということは、
技術面だけではなく、
患者さんの心のケアも同じように連携をとらなければなりません。
もちろん、これができるのであれば理想的です。
しかし、現実にはそう簡単には行きません。
かといって、一人のドクターが、
全てを専門医レベルで治療することも難しいでしょう。
経験を多く重ねたドクターなら可能かもしれませんが、
最初からそれができることはありません。
経験を積み重ねる間も、
その時々でできる範囲で患者の希望を叶えていく必要があります。
技術や経験豊富なドクターが、
そうでないドクターに対して悪く言う事はできません。
なぜならば、そのドクターも、未熟な時代があり、
それを乗り越えてそこにいるのですから。
つまり、歯科医師は各年齢や各経験によって、
診療スタイルやアプローチが異なって然るべきであり、
大切なことは、プロセスがどうであれ、
皆で患者を正しき方向に導くことなのです。
患者を正しき方向に導く。
これこそ医療人全てが担う責任の本質です。
正しさはそれぞれありますが。
もちろん、人間の行う事ですからいろいろな考え方があるでしょう。
正しさの在り方も、その時々で変わるはずです。そこに、成長のプロセスが存在します。
話を臨床の現場に移しましょう。
多くの歯科医師も衛生士も、
歯周病という疾患を正確に捉えてはいません。
捉えているのならば、 日本人の歯の喪失率が改善されているはずです。
ところが現実には、 今も多くの日本人は自らの歯を喪失しているのです。
歯を一生残すためには何が必要なのか?
不思議なことに、
歯科大学の教育課程の中に明確な定義がないのです。
歯を一生残すための授業がないという事です。
おそらく衛生士学校でもきちんとしたものはないはずです。
さらに、 歯周病という疾患の概念そのものを、
多くの歯科医師も衛生士も捉え間違えています。
歯周病と歯周炎。 この2つの違いを、
即座にかつ明確に答えられる人は少ないと思います。
また、臨床の現場では、 こ
の2つを混合して用いているはずです。
日本歯周病学会の分類では、 咬合性外傷は歯周病の一つに分類されます。
歯科医師ですら、 このことを知らない人たちは多く存在します。
咬合性外傷は歯周炎ではありませんが歯周病ではあるのです。
咬合性外傷は歯周病である。 こ
れは正解です。
ところが咬合性外傷は歯周病ですか? と聞くと、多くの歯科医師は違うと言います。
これは、これまでの大学の教育が歯周病を正しく伝えていないからです。
歯周病とは、文字通り、
歯の周りの組織の疾患を意味します。
しかしながら、 根尖性歯周組織炎とは区分されています。
歯周病と慢性根尖性歯周組織炎はどちらも 歯の周りの組織を破壊する疾患ですが、
疾患の原因が異なるために、 歯科界では区分されています。
歯の周りの組織を破壊する疾患ならば、
それは全て歯周病と捉えるべきでしょう。
このような区分は、 歯科医師や衛生士の頭の中を、
整理しづらくさせるものだと思います。 残念がら、
学校で教わる勉強内容には、 政治力みたいなものがどこかに関わってしまいます。
教授の意向や、派閥によって、
教える内容やその教育課程が異なる現実があります。
しかも最初に教わるものですから、
生まれたての小鳥が最初に見たものを親と思い込む 「刷り込み」が発生しやすいのです。
誰かに何かを教わったのなら、
本当にそれが正しい内容なのかどうかを 基礎医学に基づいて検証するべきだと思いませんか?
「基礎医学に基づいて考える」 こうした考え方がなぜ必要なのか?
歯の疾患を分類や制度で考えるのではなく、
組織学や病理学で考えて欲しいからです。
細胞や組織が何によって成り立ち、
何によって変化していくのか? 疾患を取り扱う歯科医師や衛生士は、
まずここから考えるべきでしょう。 歯と歯の周りの組織を純粋に考えてください。
基礎医学に準じて考えれば、
歯根膜、歯槽骨の破壊は何によってもたらされるのか? 炎症とは何によってもたらされるのか?
ここが明確でないのなら、
治療は根拠のない行為になります。
歯周病の原因=歯周病菌 この答えは不完全です。
正しくは 歯周病の原因=∞ です。
∞の中の一つに歯周病菌があります。
歯周組織を破壊する原因は、
多岐にわたるものだと認識してください。
そのうえで、臨床の現場で最も扱う原因は2つです。
細菌と力です。
口腔内の細菌と力のコントロール。
一般的に考えれば、
この2つのコントロールを獲得できれば、
理論上、歯を失うことはありません(外傷や特殊な疾患を除く)
つまり、歯の一生において、
この2つのコントロールをどのように行うのか?
歯科医師も衛生士もここにフォーカスすべきでしょう。
細菌と力のコントロールを、 同時に行わなければならない場所があります。
歯根膜です。
歯根膜は、構造からもわかるように、
歯周組織において 細菌と力の影響を強く受ける部分です。
歯根膜が破壊されてしまうと、
歯は歯として機能できなくなります。(例外もあります)
歯根膜が細菌感染を起こしても、
あるいは不適切な力で炎症を起こしても、
元の状態に戻れば良いのですが、
一線を越えてしまうと、
歯根膜はもう元の状態に 戻ることはできません。
歯根膜が破損されればされるほど、
その歯を歯周病で失う確率は上がります。
歯周治療とは、歯根膜をいかに保存するか? が思考の中心にあるべきですが、
歯科大や専門学校の教育課程において、
歯周検査は歯ポケットの測定から始まり、
一般的に歯周治療は、 プラークコントロールや、 ポケットの深さのコントロールを中心に教えられます。
ここに歯周病に対する治療の初歩的なミスが生じます。
そこには、歯根膜に対する深い洞察が欠如しているからです。
歯根膜に対する細菌と力 歯周ポケットの深さは、
歯周治療において一つの目安となります。
ところが、歯周ポケットばかりを見ていると、
あるところで衛生士は壁にぶつかります。
どう頑張っても治らない歯周病に悩むことになります。
なぜでしょう? それは、力のコントロールを行っていないからです。
(歯科医師でさえ、この力に対する考え方は十人十色です)
歯根膜にどれほどの力をかけると問題が発生するか?
言い換えれば、どれほどの力をかけると破骨細胞が遊走するのか?
これは矯正治療が一つの参考になります。
矯正治療で用いる力の大きさを知っていますか? 80g~200gです。
では咬合力はいかがでしょう? 20kg以上ですね。
通常、歯根膜にとって正しい力とその力の方向があれば、
咬合力が歯根膜を破壊することはありません。
さらに言えば、 矯正治療のように、
24時間以上同じ力をかけ続けるわけではないので、
少々強い力や、 誤った方向の力があっても問題はほとんどありません。
しかしながら、日中の食いしばりや、 就寝時の食いしばり、歯ぎしりは、
矯正治療程ではありませんが、 持続的かつ断続的な力をかけることになります。
80gの力を一定の時間以上かけ続けると、 歯根膜の変性が生じます。
20kg(20000g)以上の一日に数分から数十分かかるとしたら どうなると思いますか?
直ちに問題は発生しなくとも、 それが10年も続いたらどうなるでしょうか?
不適切な力は、時間をかけて少しずつ歯根膜を破壊していきます。
臨床経験者なら、想像に難しくないはずです。
この、咬合力が歯根膜に与える悪影響については後ほど説明します。
その前に、歯根膜についておさらいしましょう。
歯根膜 主な成分は、線維芽細胞を主とする細胞成分と、細胞外マトリックス(線維成分および線維間マトリックス)である。 その主な構成要素はコラーゲンの太い束からなる歯根膜線維であり、タイプIII型コラーゲンを少量に含むタイプI型コラーゲンを主成分とし、また少量のオキシタラン線維が存在する。弾性線維はないとされている。 歯根膜はその組織学的特長として細胞成分が多いことがあげられる。 細胞成分として、線維芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、セメント芽細胞、未分化間葉細胞、マラッセの上皮遺残、マクロファージなどが認められる。 尚、歯槽壁に接して、骨芽細胞、破骨細胞が認められ、セメント質に接してセメント芽細胞が認められる。
歯根膜は膠原繊維であり、弾性繊維ではありません。
弾性を持たない歯根膜が、
組織変性を起こさない被圧変位量はどれほどでしょう?
歯根膜の被圧変位ほとんど見込めないので、
歯根膜の厚みは200μ(ミクロン)ですが、
被圧変位量はせいぜい10μ前後と考えて良いでしょう。
厚みに対して20分の一しかつぶれないという事です。
(もちろん、個人差は十分にあると思います。)
残念ながら歯根膜の被圧変量を正確に調べることはできないので、
10μを目安に咬合調整する必要があります。 (これが臨床上可能な調整限界だからです)
100分の一ミリ単位でかみ合わせを調整することが、
歯根膜に対する力のコントロールを可能にするのです。
さて、保険治療でインレーやクラウンを装着する際、
どれほどの精度でかみ合わせの調整をするでしょうか?
ご存知だと思いますが、 30ミクロンの咬合紙で行うのが一般的ですね。
30ミクロン咬合紙では、 歯根膜レベルの精密なかみ合わせの調整はできません。
もし、 被圧変位量の許容をこえたアタリを、 歯根膜に与えればどうなるでしょうか?
歯根膜周囲は炎症反応を起こす可能性がありますね。
ましてや30ミクロンでさえ、 適切に調整する歯科医師は少ないと思います。
また、10ミクロン単位で調整したとしても 天然の部分と人工物の部分では、
硬さが異なるのですり減るスピードは全く違います。
ということは、天然の歯が先にすり減り、
人工物はアタリが経年的に強くなる傾向があります。
インレーやクラウンを装着するという事は、
そのままにしていればいずれ歯のアタリが強くなり、
歯周病の原因になる可能性が高いのです。
インレーやクラウンを装着した後、
定期的にかみ合わせの調整を行う歯科医が、
どれだけいるでしょうか?
全国平均で見れば、 皆無に等しいのではないでしょうか。
歯周病の原因は、
インレーやクラウンの精度が大きく関与していると思いませんか?
現実として、 沢山の患者さんを診なければならない歯科医師にとって、
精密な咬合調整を毎回行う事は難しいと思いますが、
少なくともこの概念を持っているだけでも、
いざという時に、 歯周病に対するアプローチは変わってくると思います。
加齢によって歯根膜が、 歯を支えられなくなるほど衰えることはありません。
もしそうなら、 歯根膜は時限性でなければならないからです。
歯根膜組織が時限性であるはずがありませんね。
もし時限性ならば、 年齢に応じて歯は全て等しく抜け落ちるはずだからです。
歯を喪失するのは加齢ではなく、
歯根膜に対する管理を怠っているからだといっても 過言ではないでしょう。
歯周治療における基本的な考え方? では、臨床の現場で衛生士は何をすれば良いのでしょうか?
一連の検査とブラッシング指導、
適切なスケーリング、ルートプレーニング の方法については従来通りで良いと思います。
注意しなければならないのは、
歯根膜に対して適切な被圧変位量以上の力が、
かかっていないかどうか?という事になります。
最初に、ピンセットをつかって歯牙の中央を押さえ、
揺らしてみてください。
この時、裸眼ではなく、2,5倍以上のルーペで診てください。
垂直、水平にわずかに揺れる歯があったら要注意です。 (特に垂直動揺は注意です!)
また、最も揺れる歯と、最も揺れない歯を比べてください。
最も揺れない歯が、 現在その人の持つ最も健康な歯根膜を有しています。
揺れる歯を、揺れない歯のように導くことが、 歯周治療の目標になります。
10ミクロン前後の咬合紙を患者さんに1歯ずつ噛んでもらい、
すべてがちゃんと均等に噛めているかどうかを確認してください。
また、普段使っている赤、青の30ミクロンの咬合紙を、
しっかり噛ませた状態で側方運動させたときに、
作業側の歯がわずかに動揺を起こしていないかどうか?を 同じようにルーペで診てください。
ここで歯が揺れたら、その歯は要注意です。
インレーやクラウンの高さが不適切であったり、
歯牙の咬頭内外斜面に早期接触や咬頭干渉がある場合は、
速やかに咬合調整を行い、
歯根膜に対する不適切な力を、
できるだけ排除するようにして下さい。
また、TCH(上下の歯が互いに軽く触れる程度の「弱い力」で
長時間、持続的に接触させている状態)や、
ブラキシズムに対する対策も、 もちろん行いましょう。
必ずしも咬合調整が第一選択ではありません。
各症例に応じて、然るべき対応をしましょう。
力や歯の形態による歯牙の動揺をできるだけ排除すること。
そのうえで、細菌に対するアプローチを行う事で、
歯根膜をできるだけ元の状態に導くことが可能になります。
咬合調整は歯科医師にしかできないので、
歯科医師とよく話し合い、 あらゆる角度から問題を検証してください。
咬合調整は、咬合について熟知していなければなりません。
ただアタリが強いから削るという事ではありません。
顎関節や咬合形態、各修復物の硬さや、
悪習癖の有無等を総合的に判断して、
然るべき形態を与えることが真の調整です。
あくまでも、 咬合について、きちんと理解している 歯科医師の存在が不可欠です。
ここを理解していない歯科医師では、 治る症例も治らないことになります。
衛生士が疾患を根本から理解し、
その患者にとって何が必要なのか?を、
真剣に考えることは、
衛生士の仕事をより高い次元に導くことになります。
特に歯周領域においては、
歯科医師も歯科衛生士も同じ診断力を持つべきだと 僕は思います。
昨今、 インプラント治療における様々なトラブルがありますが、
その原因の一つに、 咬合の管理体制ができてないという事が挙げられます。
普段から、 10ミクロン単位での噛み合わせの調整をしていないのに、
歯根膜を有さないインプラントの調整ができるはずがありません。
歯根膜を一生保存するために何が必要か? 歯科医師も衛生士も、
まずこの概念が必要不可欠だと思いませんか?
歯根膜を守る概念は、
インプラントを長期残存させる概念と ほぼ同じだと言えるでしょう。
僕が開業した2005年、 当時僕はこう考えていました。
2015年、保険制度は実質的崩壊するだろうと。
厳密には、してもおかしくないだろうと考えていました。
政治的背景は割愛するとして、
そう考える理由はひとつです。
これまでの歯科医療に対する考え方では、
患者さんの問題が、 長期的にみれば改善しないものばかりだったからです。
日本の歯科治療とは、 そもそも歯を長期的に守るものではなく、
その場の痛みや不安を基軸に行われているものが主流なのです。
そのような医療が今後も続いていくとは思えません。
いずれ、きちんと淘汰されると僕は考えています。
入れ歯もインプラントも、
若い時から計画的に口の中を 管理していれば必要のないものです。
日本の40年間にわたる歯科医療は 未だに欠損補綴を保険区分から外せていません。
歯を失う事をどこか容認している、
そういう風習がこの国には存在すると思います。
国民全員がこういったことをきちんと認識し、
改善するには時間がまだまだかかると思います。
でも、ご存じの通り、
?本気で自分の歯を本気で残したい人たちも ちゃんと存在しますよね。
我々にできることは、本気で歯を健康に残したい人、
一生快適に口の健康を維持したい人たちのためには、
制度による画一的な治療ではなく、
本質から考える医療を提供することです。
と同時に、多くの人に歯について本当のことを知ってもらう事です。
歯科医師も患者も様々な人たちがいます。
それぞれに正解があるため、
全ての人に認めてもらう事は難しいかもしれません。
ただ、歯科医療を基礎医学で考えれば、
誰かの言葉に惑わされることないと思います。
どんなに勉強しても、どんなに経験を重ねても、
人の身体はわからないことが沢山あります。
一つの成功例が、 他の患者に必ず当てはまるとは限りません。
一つ一つの症例を大切にしてください。
そこからしか学べないことが沢山あり、
気付けるかどうかは日々の心の姿勢と、
良き習慣の積み重ねにかかっています。
症例相談はまたメールにて宜しくお願い申し上げます。
今後とも、Mさんのご活躍を楽しみにしております。
では。
毛利 啓銘 拝 PS 今までのブログで最長記録更新です。 いぇい(笑)