金属からの脱却!?

 

金属は歯科治療には欠かせない材料である。

 

特に、歯を削った後に歯に詰める材料としてはとても便利だ。 この数十年、私達は金属の恩恵を多大に受けてきた。

 

昭和36年に始まった国民皆保険の歴史をたどれば、 金属がどれだけ便利な材料であるかは、歴史が証明 していると言える。

 

一昔に比べれば金属の質は上がってきているし、 保険の金属でも十分対応できると考える歯科医師は まだまだ大勢いる。

 

その意見には一理あると僕も思う。

 

しかし別の視点で見た場合、金属はいかがなものかと いう考えもある。これも一理あると考える。

 

果たしてどっちなのか? 答えはこうだ。 「それはケースバイケース」 答えはひとつじゃない。

 

今は2010年、この2,3年で金属に代わる新しい材料 がめまぐるしい進化を遂げている。

「ジルコニアセラミック」 おそらくあと数年後には今より積極的に使われる 素材になることは明白だと確信している。

 

ジルコニアをはじめ、 各セラミック材料の進化は本当にめまぐるしい。

 

最近の歯科材料の進化は、家電製品に匹敵する ような気がする。とにかく競争が激しい。

 

また、レジン(プラスチック)を取り巻く接着の技術も、 素晴らしく向上している。そのおかげで歯を削る量は、 昔に比べてかなり少ない。

 

そして、今日もあちこちで材料についての講義や論議 が繰り広げられている。

 

メーカーは商材を売りたいが ために、有名なドクターを招いて勉強会を催す。行く度 にいろいろと勉強になって、明日の診療の糧になる。

 

それはそれで楽しい。

だけどいつも考えさせられるのだ。

 

材料そのものの比較検討はよく行なわれても、 症例の比較検討がほとんど行なわれないのは フェアじゃない。

 

物事を一つの視点でしか見て いないことと同じだ。

 

歯科医師の裁量権だけで、 治療の質決めをすることは長期的に考えれば 歯科業界にとってマイナスだと僕は思う。

 

メーカーはもっと、歯科医師にはっきりと物をいう べきであり、歯科医師はもっと謙虚になるべきで、 ?材料がいいか悪いかというよりも、どのような 場面で用いるのが適切なのかを、 メーカーも含めてもっとディスカッションするべきだ。

 

歯科医師とメーカー、そして消費者である患者と 行政が同じテーブルにつくことを心から願う。

 

万能材料は存在しないのだから。

 

材料や治療技術に対する、歯科医師の 最低限かつ義務付けられる見解(理解力)の ばらつきは、最終的に患者の健康を脅かし、 患者からの信用も失う。事実、歯科医師という 職業は昔に比べてその社会的信用を失って きている。

 

理由は様々であるが。 金属からの脱却に異論はない。

 

それよりも 怖いのは、脱却してからの着地点を間違えることだ。

 

この問題は、例えれば旅に似ている。

 

どうやって行くかも大切だが、どこに行くかは もっと大切なのだ。

 

方法論と方向論 この2つは同時に考えることで答えの精度は上がるのだ。