河口湖探検隊

東京歯科大学の軽音楽部(MLS)の他に在籍していたクラブがある。

その名はJAZZ研究会。 変態集団の軽音楽部に対し、

JAZZ研究会はとても大人でおしゃれな集団。

品行方正でアダルトムード満載である。

2学年上の納富先輩が、

すでに廃部になりかけていたJAZZ研究会を、

医局の森山隆史先生と青木聡先生とともに 復活させたのが始まりであった。

JAZZを真面目に演奏する部活なので、

軽音楽部のような荒々しいムードはない。

裸で叫ぶこともなければ、頭を縦に振り続けることもない。

 

あるとき、JAZZ研のベーシストがいないので参加してほしいと、

一学年上のべか先輩に頼まれて、 期限付きで承諾したのが事の始まり 。

このべか先輩には本当にお世話になった。

わがままでいううこと聞かない僕を、

長い目で育ててくれたやさしい~~先輩の一人である。

しかし後で分かったことだが、

この先輩、キレるとほんとに怖い人らしい。

べかさん、あの時は本当に、、、、

ありがとうございました。

そんなこんなで数年後、

いつの間にか僕は部長になっていた。

この集団、僕は基本的に苦手である。

なぜか? 学生の部活動になぜか医局のおっさんが二人もいるからだ。

しかも、このおっさん、

大学病院ではとても偉い立場にある。

にもかかわらず、性格は学生以上にやんちゃなのだ。

血気盛んな変態集団も、

この二人の前ではなぜかおとなしい。

病院実習のはんこの威力は絶大である。

卒業できるかどうかがかかっているからだろう。

4,5,6学年の軽音楽部の猛者たちも、

さすがにこの2人の前ではおとなしい。

しかし、大学2年生の僕にとって、 そのような勢力図は関係ない。

その時の僕にしてみれば2人は、 ただの白衣を着たおっさんである。

いや、ただのおっさんではない。 楽器が上手くて、演奏には厳しい、、、、、、

おっさんである。 森山先生、青木先生、納富先輩の指導は厳しい。。。

優しい顔でも、目は笑わない。 彼らは言葉で指導しない。

態度で伝えてくる。

あれ?助っ人で加入したはずなのになぜこんなにも厳しくされなきゃいけないの?

素人つかまえてそこまでやるか? というくらい厳しく音楽を指導していただいた。

(おかげで今もちゃんと弾ける。) ?納富先輩の超絶ドラム、 青木先生のエロいギター、

森山先生のアダルトなサックス。

ここに一人へたくそな僕のベースがはいる。

もうこれは集団リンチですよ。

よってたかってぼこぼこにされながら、

ついていくのがやっとであった。

?もちろん、何度もやめようとしたけれど、

そのたびに軽音楽の先輩に

「やめるなら上手くなってからやめろ、逃げたら負けだぞ」

と優しくアドバイスを頂いた。

可愛い後輩たちが増えていくにつれ、

いつのまにか部長になっていた。

夏になれば河口湖で夏合宿と称し、

一週間山籠もりで音楽三昧であった。

このとき、誰が言い出したかは覚えていないが、

真夜中に廃墟を探検する企画が発案された。

すでに閉館した古いホテルに、

懐中電灯一本で探検するというこの企画。

今考えてみればただの不法侵入である。

ま、当時は深く考えず、

とにかくめぼしい廃墟を見つけては夜な夜な徘徊するという、

わけのわからないイベントを繰り広げていた。

あるとき、ホテルの入り口に回転式の施錠があり、

4桁の数字をあわせて何とか開けようとする 森山先生と和田先輩。

思いつきの数字が当たるはずもなく、

一から順に、 1111,1112,1113~ 、、、

 開くかっ!!! えーーーーーいめんどくさい!

和田先輩かしてくださいっ!!

4111,4112,4113、~~~

はっ??俺も同じことしてるやんけ~。

これじゃ=日が暮れるぜっ!!って暮れてるか。。。

(夜の10時半くらいですから) ん?

よく見ればただの簡単なスチールの留め金じゃん。。

ふむふむ、ここをこうやってグニャリと曲げて、、、、、、

 

おおおお!!! 僕

 

「森山先生!!開きましたああああああ!!」

森山先生 「まじか!? 番号はいくつだったんだ!?」

僕「 壊して開けましたあああああ!!!」

森山先生「  バカたれ~~~~~~~~!!」

 

といいつつも、森山隊長の目は爛々と輝いている。

全員が屋内に入り、廃ホテルのフロントについた時、

さらに上層階を目指す、森山隊長率いる探検組と、

なにかあったら迅速に対応できるように 青木軍曹率いる見張り組に班を分けた。

交代で探検することになった。

僕は当然、第一班の森山隊長について行った。

 

真っ暗闇の廃ホテルは本当に怖い。

?廃材を踏みしめながら、いろいろな部屋を探検する。

 

みんなでぎゃーぎゃーいいながら、

最上階にある露天風呂まで行き、記念写真!!

暗闇廃墟を堪能したのちにフロントに戻れば、

青木先生のマジでやばそーな顔があった。

どーしたんですかぁぁぁぁ~~~~。(小声で)

?青木先生「しっ!!警備の人がきてるんだよぉぉぉぉぉ~~~懐中電灯を消せっ!!」

 

青木先生いわく、警備がこちらの存在に気づき、

いつでも捕まえられる状態にあったとのこと。

ただ、この季節はこのような輩が多いのか、

早く消えてくれればお咎めなしとの独り言を、

警備員がつぶやいていたらしい。

 

はしゃぎまくる森山班。

顔面蒼白の青木班 捕まれば連帯責任で、

大学の職に関わる。

捕まるわけにはいかないのである。。。

青木先生談 「とにかく早く森山班に戻ってほしかった。ある意味、廃墟の怖さよりも、  捕まる怖さの方が何倍も大きかったよ」

 

うーーーーーーん!!

これが本当の肝試し!!

職を賭けるところがにくいぜっ!!

 

警備のタイミングをはかりながら、

全員ホテルから脱出!!

宿に帰り、それぞれの恐ろしさを肴に呑み明かす 、、、

そして翌年も廃墟探検に繰り出すのであった。。。

(懲りない輩ばかりです)

JAZZ研究会と称しながらも、

そこにいたのは家族みたいな仲間だった。

枯葉を何回弾いたことだろう。

B♭ブルースを何回弾いたことだろう。

怖いおとーさんやおにーさん、

かわいいおとーとやいもーと と過ごした時間はいまでも大切にしまっている。

 

みんなそれなりにがきんちょだった。

でしょ? 森?山隊長は数年前に他界した。

今でも時々思い出す。 大黒柱のような存在だった。

青木軍曹は今もたぶんエロいギターを弾いている。

そのうち歯科界で偉い人になりそーだ。

多恵姉さんはS先輩のクリニックで今も頑張っている。
(サーファーになったらしい)

西山2等兵は福島の前線で戦っている。

あいかわらずぼやき方が昔とおなじだ。

山崎はガンガン稼いでいるうよーだ。

ホンダあやのは2児のママだ。ラウドンさんになった。

麗子としのぶはわからない。

たぶん元気に違いない。

藤岡はドラムをやめたような噂。

でも仕事はがんばっているらしい。

納富先輩は歯科医をやめてプロドラマーになったらしい。

和田先輩はたぶん今日も呑んでいる。

グイグイ呑んでいることだろう。

この人が一番おっさんだった。

チェリー(箕田)は介護施設でがんばっているらしい。

歯科医はたぶんやってなさそうだ。

べか先輩は、、、、 たぶん今日もスケベなことを考えているだろう。

 

みなさん、 誰かが還暦迎えたら、

あの夏合宿やりませんか?

森山隊長も来てくれるような気がします。

場所はいつもの河口湖で。

 

あ、ビールは持参でお願いします。