初心

2005年に広尾で開業して今年は20年目を迎えることになった。

開業して半年くらいは患者さんがほとんどいなかった。

一年くらいはとにかく暇だった。

勤務医時代は、一日に一人で50人以上診察することは当たり前で、一人で70人以上診察する日もあった。

野戦病院みたいな歯科治療を繰り返すことよりも、

根本的で、建設的な治療を施したい気持ちが強くなり、そういうクリニックにしようと心に決めた。

 

スケルトン状態のテナントを内見したとき、間違いなくここは苦労するだろうと確信した(笑)

 

挑むか逃げるか1分考えた。上手くいくイメージが全然沸かなかった。

逃げようとする自分をイメージした後に、逃げたことを後悔する自分がはっきりイメージできた。

「ここでやります」

僕はテナントのオーナーに告げた。

 

自分の中で、縁もゆかりもない場所で本当の意味で信頼を得るには20年はかかると思った。

僕の考え方がここで通用するためには、そのくらいの時間がかかる事を覚悟した。

とはいえ、のんびり構えることもできない。一歩間違えれば強制退場である。

 

眠れぬ夜を幾度となく経験し、挫折と落胆の日々がしばらく続いた。

1年目が過ぎた頃、あれこれ悩むことを止めた。

クリニックを潰すつもりで本心をさらけ出して診療に臨んだ。言いたいことを言い、やりたいことをやった。

自分が正しいと思うことを臆せず患者さんに伝えた。

 

あれから19年が経ち、ようやく20年目に突入する。

いろいろあったけれど、今でもあの頃の気持のままだ。

人が仕事を選ぶのではなく、仕事が人を選ぶのだと教わったことがある。まさにその通りだ。

 

真っすぐ仕事がしたい。

それだけだ。

 

人生は短い。ここから先は、さらに貴重な時間だということを痛感している。

歳を重ね、今日生きていることに感謝しない日はない。

だから、一人でも多くの人たちが、幸せな未来を生きる事をマジで心から願っている。

誰かの未来の役に立つことをする。それが仕事の本質だ。