追想10

歯科医療の正義は、各地域、各歯科医師、各患者によって異なる。

誰かに施したその治療方法が、外の誰に当てはまるとは限らない。

患者の数だけ正解があり、歯科医師の数だけ方針がある。

医療制度とは、これらを平均化したものであって、

平均から外れてしまうと、制度の恩恵を受けづらくなる。

残念ながら、近年の医療制度は複雑怪奇な側面を持つ。

各業界の利権や、流行りの概念が、物事の本質をどんどんぼかしていく。

全くもって間違った概念を刷り込まれた患者は少なくない。

本当の事を伝えても、なかなか信じてもらえないこともある。

わけのわからない医療行為が、

まるで素晴らしい技術のように勘違いしている人達も少なくない。

食事と同じく、医療もまた、信仰心で選択されている傾向がある。

 

これまでの話をまとめよう。

どうかこの原則を忘れないでいただきたい。

 

歯を悪くする原因は、生活習慣の在り方(特に食事)と歯の治療そのもの。

だからできるだけ歯を治療しないで済むように、日常的にきちんと心がけて生活する事。

もし治療をするなら、治療計画をしっかり立てること。

無計画な歯の治療を避けること。

各地域、各歯科医師、各患者によって医療の正解が異なる。

ゆえに日本全国どこでも同じクオリティの治療が受けられるわけではない。

一日にたくさんの患者を診察すればするほど、治療の質は下がる。

だからと言って自由診療で高いお金を払えば、なんでもうまくいくわけではない。

大切なことは、患者が望んでいることと、歯科医師が提供したいことが合致しているかどうか。

どんなに良い治療を施しても、その状態が未来永劫保たれるわけではない。

口の中は絶えず変化するので、治療後にきちんと予防管理を行うことが、歯科医療のメインフレームである。

治療はあくまでも良好な環境を獲得するための手段であり目的ではない。

どんな歯科材料にも利点、欠点がある。

歯科治療だけにこだわり過ぎてはいけない。

食の在り方や、生活習慣の改善、何より、歯の健康を守ろうと普段からきちんと意識する事。

これらが疎かになれば、再び治療を繰り返すことになり、口腔内状況がさらに悪化する。

治療のクオリティだけにこだわるより、習慣の改善を含めた全体のバランスが重要。

歯磨きは短期的には予防になるが、長期的には予防効果が低い。

砂糖などの糖を控える方が歯磨きより効果的である。

フッ素を塗布すれば良いという考え方も間違い。

全てはは食事の在り方が未来を左右する。

 

「歯は治すものではなく、守るもの」

 

正しい知識を身に着け、正しい生活習慣を心がければ、歯の問題だけでなく、

身体の健康維持にも繋がる。

歯の健康を軽視すれば、未来の健康はだいたい厳しい状況になるだろう。

そろそろ新しい時代の感覚を身につけましょうね。

 

100年後の子孫たちが、きっと今のこの時代を、歯の健康を軽視したこの時代を嘲笑する日がやってくるだろう。