そこに埋めるかっ!??

? 父親の紹介で来院された患者さん、

横浜の方で歯周病と知覚過敏の治療受けたが、

改善せず、かぶせたものがすぐに割れてしまう。

という主訴であった。

 

上の前歯と右下の小臼歯何本か失われており、

上顎の前歯にはぐらついたブリッジ 左の下にはインプラントが2本。

何人かの歯科医師に診てもらうものの、

一向に改善しないことに 不安を感じ、

僕の父親に相談したところ、

僕のクリニックに来ることになった。

 

口腔内とレントゲンを見た瞬間に、

 

あーーー。。。だよな。。。。 と嘆いてしまう。

 

年齢は60歳。 歯牙はどれも咬耗しきっている。

右下の奥歯は舌側に強く傾斜、頬側の歯肉は退縮し、

歯根は大きく露出している。

右上7番と左下5番はぐらつきが大きすぎて今にも抜けそうだ。

 

もう数年間、口の中の問題で苦しんでいるとのこと。

 

そりゃそうだ。 どれも対症療法ばかりのオンパレードである。

そんな状態の口の中に、

なぜかインプラントが2本、誇らしげに稙立している。

 

またか。。。

無計画な歯の治療ばかりを繰り返し、

口の中全体はすでに崩壊寸前である。

そこにインプラントを入れる。 もう最悪だ。。。。。

 

インプラントの位置が、舌側に寄りすぎている。

インプラントの位置を動かすことはできない。

外すか?このまま使うか? 迷うところだ。

崩壊しかけている口の中に合わせてインプラントを入れる。

 

崩壊しかけている建物に、新品のドアをあつらえる。

同じことである。

さて、このような患者さんを目の前にしたとき、

歯科医師はどのような治療方針をたてるべきか?

 

そして患者さんはどのような治療を選択するべきか??

 

その選択で、運命は大きく分かれることになるのだ。

小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり

 

目先の事ばかり考えていると、

後で痛い目に合うという事である。

 

実はこのようなケースは、

僕の経験上、50歳以降の日本人には多く認められる。

 

歯が丈夫だと自負している人、

歯医者にあまり行かないことを自慢する人。

その中には確かにその通りだという人がたまにいる。

しかしそのほとんどは、

少しずつ蝕まれている問題に 気付いていない人がほとんどである。

気づきたくないのかも。。。

 

45歳あたりから、

それまで霧に隠れていた問題が少しずつ出現してくる。

そこで気づけばいいのに、

体感や感覚だけで治療を選択するから、

その後10年以上を経て問題はブーメランのように帰ってくる。

 

さらに大きくなって。 60歳にもなれば入れ歯もしょうがない。

と考える人は全国的にみて少なくないだろう。

 

そしてそれがあたりまえだと認識している歯科医師も 未だに存在する。

 

入れ歯もインプラントも、 本来、人生には必要のないものである。

歯が悪くなったという表現は適切ではない。

歯を悪くしたという表現がおおよそ正しい。

歯が勝手に悪くなるのではない。

 

歯を悪くする原因は、患者と歯科医師がつくっている。

 

想像してみてほしい、

もしあなたが今から30年前の時代にタイムスリップしたとしよう。

その時代の健康に対する考え方を目の前にして、

唖然とするのではないだろうか?

喫煙の問題、食品添加物の常識、 生活習慣病への取り組み方など、

今とは比べ物にならないほどに、

でたらめな常識がありふれているはずだ。

 

その頃の歯科医院に通院したいと思うだろうか?

アマルガムを平然と使い、簡単に歯を削り

、簡単に歯を抜いていた時代。

今から30年後を想像してほしい。

今と変わらず、ホームページに治療技術を宣伝しているだろうか?

インプラント1本10万円!

なんていうアホ臭い宣伝が 横行しているだろうか?

今ある歯科の常識が、

その日まで続いているだろうか?

もし、そうであれば、

歯科業界は完全に敗北を認めることになるだろう。

そうなれば歯科医療はもはや人災である 。

歯は治療するものではない。

予防するものである。

予防とは、歯を磨くことだけではない。

歯を予防するには様々な方法が存在する。

各個人、各年齢に合わせた予防法がある。

?歯磨きは、その一部に過ぎない。

スウェーデンはそれを実証している。

いまから30年以上前、

日本とスウェーデンの齲蝕罹患率はほとんど同じだった。

スウェーデンは予防に力を入れ、

日本は治療に力を入れた。

その結果は一目瞭然である。

もはや日本人の口の中は、

崩壊していると言っても過言ではない。

哀しいことに、日本人は、

自らの口の中がどうなっているのかさえ知らない。

 

日本人が選択した治療主導型の歯科医療は、

いまだにインプラントや義歯を 生み出す温床になっている。

歯科とは、

まずそこに予防という大きな概念があり、

その中に、 治療という概念があるべきである。(現実は逆になっている)

 

その上で、治療について学問を深めることには 全く異論はない

。 今の日本は、歯科医師でさえ、

今の日本人にとって 予防とは,

歯磨きやプラークコントロールが主軸であると 勘違いをしている。

それは40年前の概念ですよ。。。

それ、神話とか、伝説とかのレベルですから。

 

今の日本人、

自分の歯磨きだけで予防できる人はほとんどいません。

歯に詰め物や被せものがある人。

かみ合わせに問題がある人 歯ぎしりやくいしばりがひどい人 歯がひどくすり減っているいる人 、、、etc    歯ブラシ頑張るだけじゃ無理ですから。

 

歯科医師は、

なぜ歯が失われていくのか?について ほとんど考えていない。

どのように治療するか? に目が行くばかりである。

僕に言わせれば、

この業界は30年前の体質とそれほど変わっていないのである。

 

おかげで、治療主導型の歯科医療が今も横行している。

数年しかもたない歯科医療に、

国民の医療費は湯水のように 使われている。

そして、国民皆保険制度は、崩壊を始めている。

おそらく、歯科は、近い将来国民皆保険から外れると予測している。

少なくとも、

被せ物は保険から外れていくのではないだろうか?

(中途半端な被せ物が横行するよりはましだ。)

その代わり、歯科医師は、

行った治療に対して、今以上に責任を課されるだろう。

保険治療の制約が年々厳しくなっている現状をほとんどの国民は知らない。

しかも。

21世紀にもなったというのに、日本人の口に対する健康意識は 昭和のレベルだと言える。

 

じゃあ、どうすればいいの? と思われるだろう。

本当に、自分の歯を一生守りたいのなら。

毎食後に歯を磨いてください。

デンタルフロスを使って下さい。

口腔内洗浄器を使ってください。

砂糖をできるだけ控えてください。

炭水化物を取りすぎないようにしてください。

きちんとした食事をとって下さい。

1~3か月に一度、定期検診のために歯科医院に通って下さい。

生活の中に、歯の健康を守る意識を持ってください。

あなた自身に合った、予防法を知ってください。

 

むやみに治療するのではなく、

計画的に治療を行って下さい。

歯科医師に、将来の憶測を尋ねてください。

明確な答えをもらえない歯科医院には通わないでください。 ,,,,,etc

 

本当のことを知らないというだけで、

日本人の口の中には、

失われた歯の原因を明らかにしないままに、

今日も無計画なインプラントが埋入され続けているのではないかと 妄想してしまう。

こんな話、他人事じゃない日がやってくるかもしれませんよ。