追想 その6

一般的な歯の問題の原因は実に簡単である。
食事と習慣の「質」である。

糖分を過剰に摂取し、歯磨きを怠れば、虫歯や歯周病になる運命はほぼ確約される。
そこに歯科治療を加え、いったんは解決したかのように見えるが、
普段の食事や生活習慣はそのままに、虫歯や歯周病の再発を繰り返し、
さらなる歯科治療が加わる。これを繰り返しながら、歯を失っていく。

歯の治療がもたらすのは、あくまでも一時的な解決である。

一年で数本の歯を失えば大問題だが、数十年かけてゆっくり失うのであれば
さほど問題ではない。と考える人は多い。
とにかく気にならなければいい。
痛みや不安、不快が無ければ、たとえ歯を何本失おうと構わない。
と考えている人は実は少なくない。
あるいは、歳を重ねれば歯を失うのは致し方ない、と考える人は
かなり多い。
そして、日本の歯科医療制度は、そういう人たちに向けて制度設計されている。
この50年、歯科医療はそういう考え方を中心に設計されているのだ。

治療を中心に考える歯科医療の弱点がここにある。

続く