追想 その8

社会の階層の在り方は、それぞれに属する人間の生活の在り方を表す。
病気になる人間のほとんどは、なるべくしてなっているわけで、
飽食と過食のこの時代に、それだけ飲み食いすれば、そりゃ病気にもなるわなと、
口の中を毎日見れば見るほど、食と疾患の相関関係にうなづいてしまう。

社会の格差はさらに影響する。
食事の内容と収入は深く関係するから、所得の低い家庭は、どうしても
食事が加工食品に頼りがちになる。ただし、これは地域にもよるので、
所得の低さが必ずしもこれに当てはまるわけではない。
端的に言えば、
添加物や砂糖を多く含んだ食品を日頃から取り続ける習慣こそ、
あらゆる病気の根源といってもいいだろう。

虫歯や歯周病の原因を排除しない限り、たとえ治療を施しても
繰り返される歯科治療によって、状況はさらに悪化していく。

数年から数十年のスパンで悪化するから、
事態を深刻に受け止める頃には、手遅れに等しい状況となる。
多くの歯科医師は、そういった一般的な患者を診察する。
そこには、痛みや不安を取り除くことを中心とした歯科医療を提供することが
基本となり、歯を一生大切にするための考え方をいちいち啓蒙している暇などない。
理想的な歯科診療を行うことが困難になり、
これが、歯科医師の質の低下を招くことになるのだ。

続く