補綴治療

インレー、クラウン、ブリッジ、義歯などを用いて失った歯の部分を補う治療です。

歯科治療最大のリスクは補綴治療

歯科医師として日々診療する中で、あなたに最も伝えたいことがあります。
それは詰めたものや被せたものが未来の疾患の原因になるということです。
現実として、歯科治療のそのほとんどは、過去の歯科治療のやり直しが中心であり、このやり直しを繰り返しながら、詰める範囲、被せる範囲は増大し、繰り返せば繰り返すほど、歯を失うリスクが上がります。

なぜでしょうか?
その原因は大きく分けて3つあります。

  1. 歯と同じ硬さ(性質)の材料がない
  2. 歯にきちんと材料を適合させることは実はかなり難しい
  3. もともとの歯の形を再現させることができない

歯と同じ硬さの材料がない

そもそも歯というものは、人間の一生をかけて少しずつ、すり減ります。すり減ることで、歯周組織や顎関節に余計な力がかからないようになります。すり減ることで、関連する組織を余計な「力」から守るのです。

たとえるなら、靴底の素材とおなじです。
もし、靴底にすり減り減りにくい硬い素材を用いたらどうなるでしょう?力がそのまま膝や腰に伝わり、連動する各組織にダメージを与えることは想像に難しくありません。

歯も同じです。
歯の硬さにはきちんと意味があり、正しい力(大きさと方向)を与えることで、歯は一生をかけて正しくすり減るのです。歯と異なる硬さを持つ材料を詰めたり被せたりすれば、歯のすり減るスピードと各材料のすり減るスピードに「差」がうまれ、余計な干渉がうまれたり、歯の位置変化を引き起こしたりするのです。

これまで多くの患者を診てきましたが、過去の被せ物や詰め物に起因する疾患がとにかく多いのが現実です。これを解決するためには、選択した材料それぞれの硬さを考慮した、定期的な調整が必要不可欠です。少なくとも、半年から一年に一回は確認することをお勧めします。

歯にきちんと材料を適合させることはかなり難しい

歯を削り、詰めたり被せたりするという行為は、実はとても奥の深いもので、正しく削り、正しく詰める、被せるということは、歯科医師の永遠のテーマの一つでもあります。

もしあなたが、ここにこだわる歯科医師に出会えたらラッキーでしょう。なぜなら、多くの歯科医師は、ここにこだわる時間を与えられることがないからです。これまでの多くの歯科治療は、一日に多くの患者を診察する前提で制度設計されてきました。そのため、患者一人一人に丁寧な治療をおこなうことがそもそも困難な状況だったのです。様々な工夫を施しながら問題を解決しようとする歯科医師もいれば、現実とわりきってあまりこだわらない歯科医師もいます。

地域や歯科医院によって、考え方は様々です。また、詰め物や被せ物の多くは、歯科医師ではなく技工士が作製します。優秀な技工士の存在が無ければ、優れた補綴治療を遂行することは困難となります。
詰め物や被せ物の適合性、制度、美しさ、耐久性は、歯科医師の考え方と技工士の技術によって大きく左右されるのです。

もともとの歯の形を再現させることができない

歯の形と並び方には「意味」があります。前歯と奥歯では役割が異なり、お互いを補うために存在しています。全ての歯の形が、異なるのにもきちんと理由があります。

人間は、その発育過程の中で、生体のもつ法則に従って口腔機能を獲得します。ところが、歯科治療が介入することで、歯の形や並びが変化し、歯が本来の役目を十分に果たせなくなる場合が少なくありません。

詰め物や被せ物をする時点で、もともとの歯の形や並び方を歯科医師が知る手段はほとんどありません。(定期的に治療とは関係なく歯型模型を作製していれば別ですが)元の状態と全く同じ形態にすることは不可能であり、歯科治療によって提供される歯の形や並びは、歯科医師の任意(知識と経験にもとづくもの)によって構成されます。

つまり、歯科治療によって詰めたり被せたりする範囲が広がれば広がるほど、各個人の持つ「本来の歯の形や並び」から逸脱していくことになります。もちろん、ある程度の許容範囲はありますが、それを超えてしまうと、さらに問題が大きくなるのです。

3つの目標と、4つの成功条件

補綴治療3つの目標

  1. 機能的かつ美しい形態であること
  2. 長期的に安定すること
  3. 快適であること

補綴治療の成功条件

  1. 目的に合わせた材質を選択すること
  2. かみ合わせ全体のバランスを考慮すること
  3. 生涯にわたって起こる口腔内の変化に対応させるための、定期的な確認と調整を怠らないこと
  4. 補綴物を長期的に安定させることにこだわる歯科医師を選ぶこと。

補綴治療には、口腔全体を根本から考える責任があります。
診断、設計,製作、管理の全てが一貫した理念のもとに行われる必要があります。

どれを使うのが一番いいの?

どれが良いかということは、一概にいうことはできません。
失った歯の部分や本数、噛み合わせ、コスト、患者の価値観、口の中の清掃管理状態などによって変わってきます。
入れ歯、ブリッジのどれにしても、かみ合わせるということに変わりはありません。
当医院では患者様に合わせた噛み合わせを探しながら治療を進めていきます。

3つの目標と、3つの成功条件

失った歯を補うわけですから、色々考えすぎてしまうこともあるかとは思います。

しかし、目標と条件は至ってシンプルなものです。

補綴治療の目標

  • 機能的に、審美的に、失われた組織の回復改善を図る
  • 長期的に安定すること
  • 快適であること

目標達成=成功のための条件

  • 歯を綺麗な状態で保っておくこと
  • 噛み合わせの全体のバランスをしっかりとること
  • 口腔内の変化に合わせていくこと

ただこれだけです。入れ歯であろうと、クラウン、ブリッジ、であろうと、インプラントであろうとすべてにあてはまることです。
どんなに素晴らしい補綴物でも、管理が行き届かなければ、長持ちしません。
補綴物を作製するにあたり、気をつけなければならないのは、他の歯や、噛み合わせそのものに問題が無いかどうかなど、あらゆる視点から診断する必要があります。

一つの補綴物を作るということは、口腔全体のことを根本から考える責任があると考えます。
設計、製作、維持管理のすべてが、一貫した理念のもとになければならないのです。

注)補綴物製作にあたり、歯科医師の正確、精密な手技と、優秀な技工士は不可欠です。
上記については、歯科医師の手技や補綴物そのものに問題がないということが前提となります。