ペン画像

2015年06月10日 | インプラント治療の条件

  • Before

    症例-Before
  • After

    症例-After
  •  

     

    近年、多くの歯科医師が。インプラント治療を行うようになったが、僕が始めた頃は、むしろ反対や否定する歯科医師が今より多くいた。僕にとっては、むしろその方が良いと考えていた。はっきり言えば、この治療法があまり一般化してほしくないとも考えていた。インプラント治療をきちんと行うためには、様々な条件があって、条件をきちんと満たさなければ、後々、トラブルになる可能性が極めて高い。歯科医師のモラルが大きく問われる治療法であり、現在の歯科医療の在り方では、誰もが安全に遂行するにはなかなか難しい現実があるからだ。

     

    そもそも歯科医療には複雑な背景がある。社会全体の問題と各個人の問題が交差している。保険制度の問題、各地域性の問題、各歯科医師の問題、各患者の問題、 これらの問題が、常に浮遊している。疾患を治すことが医療の最重要課題であるはずなのに、医療行為自体が、新たな疾患を招く現実がある。こういう問題を解決できないままに、インプラント治療が拡大していくことは、これまで以上に様々な問題を抱えてしまい、それこそ収集がつかなくなるのではないかと、危惧してしまうのだ。インプラント治療が一般的に認知されるようになればなるほど、トラブルが増えることは最初からわかっていた。そして、 その通りになった。

     

    ブリッジや義歯に代わる新たな治療法として、インプラント治療には優れた点が多くある。だが考えてみてほしい、そもそも、なぜその歯を失うことになったのか? 天然の歯を守れなかった現実を忘れてしまえば、インプラントも同じ道をたどる可能性がある。 インプラントはブリッジや義歯と異なり、簡単にやり直すことができない。もし失敗すれば、患者側の損失は大きくなる。

     

    歯科医師がもしインプラントを取り扱うのであれば、基礎医学を徹底的に学んでほしいと思う。診断を誤れば、治療を誤るだろう。 セミナーに行くだけでなく、学生時代の教科書を一から読み直してほしい。謙虚な気持ちで取り組んでほしい。歯科医師ならば、それはさほど難しくないはずだ。日々の診療に追われ、いつの間にか生体のルールを忘れてしまう歯科医師のままでは、インプラントを正しく扱えないだろう。

     

    歯科医師だけでなく、患者側も自らの問題ときちんと向き合わなければならない。患者側も歯を失った原因をきちんと理解することが大切だ。痛みや不安を取り除くことばかり考えてしまうと、問題の本質が霧の中に隠れてしまい、患者自身が迷子になる可能性がある。歯科治療には、歯科医師と患者にそれぞれ責任があり、インプラント治療はその典型である。お互いが理解し、信頼し、協力することで、良い結果に結びつくのだ。

     

    あらゆる点で、治療方針に一貫性を持つ。細部までおろそかにしてはいけない。そういう意味では、インプラント治療は歯科医師の本質を気づかせてくれる治療なのかもしれない。

    僕はいつも患者さんに言う。

    「歯科医師がインプラント治療を望むべきではありません。 患者さん自身がこの治療について十分に理解し、納得したうえで望むかどうか?が重要です。 あなたがこの治療を、心の底から望むかどうか? そうでなければ、この治療を選択するべきではないでしょう。」

     

    インプラント治療を成功させるためには様々な条件がある。できるだけ多くの条件を満たしていることが望ましい。組織学的、生理学的な条件はもちろんのこと、あらゆる条件を満たしたうえで、僕が提示する最後の条件は、「患者さんが心の底から望んでいる」である。