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2016.04.04|本質という鍵

 

最近、他院にて行った審美治療後の相談が増えてきています。
セラミックを被せてきれいにしましょうと、
歯科医師に勧められて治療を受けたのだが、
どうにもこうにもかみ合わせが合わない。
とのこと。

 

歯科治療の全てを、きちんと伝えることは実はなかなか難しく、
専門的知識だけでなく、経験も交えて説明すると、
一般の人にはかなり複雑な内容になります。

 

今日は、歯科治療を受けるにあたって,
ここだけは注意してくださいという
メッセージをこめてアドバイスします。

そして、少し回りくどいとは思いますが、
「歯科」 というものがいったいどういうものなのか?
ということから伝えたいと思います。

 

歯科治療の注意点をいきなり箇条書きに伝えてもいいのですが、
それだけでは、本質が伝わりにくいと思います。
歯科医療の歴史、事情から見えてくる、歯科医療の弱点を、
ある程度は理解しておいた方が、歯科治療を受ける際に、
それが本当に自分の望む治療なのかどうか?
を考えやすくなるでしょう。

 

日本の歯科医療の中心は保険診療です。 
保険診療には様々な制限があり、
できること、できないことがあります。
一般的な歯科医師はその制限のなかで
治療を選択せざるを得ないのです。

 

 

全てがルールで決まっているので、
そこに歯科医師の個性は必要ありません。
決められたルール通りに歯科治療を進めていくわけですから、
極論でいえば、歯科医師免許さえあればいいわけです。

 

 

さらに、医療行為は、結果を保証する義務がないので、
たとえ失敗しても、歯科医師に責任はありません
(悪質なケースは除く)
たとえば、根管治療をして、
上手くいかない場合は、抜歯して、義歯やブリッジに
移行すればいいだけなのです。

 

もちろん、
保険診療における治療の組み立て方が一概に悪いということではありません。

この仕組みは、
大勢の人たちが抱える歯科疾患に対して作られたものですし、
それなりの医学的根拠に基づいて作られているものですから、
保険治療で十分に対応できる場合もあります。

 

 

ただ、注意していただきたいのは、
この仕組みが、全ての疾患に対して万能ではない
ということです。

 

 

わかりやすく言えば、疾患の程度が小さければ小さいほど、
保険診療でもきちんと対応できると考えてください。
逆に、疾患の程度が悪くなれば悪くなるほど、保険診療の欠点が
露呈してくる可能性が高いということです。

 

 

保険診療でもちゃんとできるという歯科医師と、
保険診療ではちゃんとできないという歯科医師がいます。

 

 

それは、「視点」の違いなのです。
何を基準に考えるのか? によって、どちらの意見も正しくなります。

「ちゃんと」 という部分が両者の間で異なるわけです。

 

 

例えば
拡大鏡や顕微鏡を用いる歯科医師と用いない歯科医師では、
「見えている」世界が違うわけですから、判断基準も変わります。
また、地域によって患者さんの要求度も変わります。
歯科医師の考え方や技量は、
自らの患者さんの要求によって決まる部分もあるので、
歯科医師といえども、
そこには様々なタイプが存在するわけです。

 

 

実際、僕がとある地方のクリニックに見学に行った際、
僕なら抜歯せず保存するだろうなという歯を、
そのクリニックのドクターはすぐさま患者さんに抜歯を宣告していました。

一日の患者数が多すぎて、
細かい説明や治療に時間をかけていられないからです。
悩む時間すらないのです。

歯科医師の数が少ない地域の場合、
一日に対応する患者が多くなります。
この場合、患者一人当たりに使える時間も限られるので、
そもそも根本的な治療をおこなうことは物理的に難しくなります。

「ちゃんと」 が、それぞれの地域でも異なるわけです。

 

 

今から40年前、日本は歯科医師の数が足りない状態でした。
保険診療の仕組みは、それなりの患者数をこなすことを前提に作られたとも言えます。

 

 

歯科治療の入り口は、そのほとんどが「痛み」を取り除くところから始まり、
痛みを取り除いた後は、再び以前のような生活ができればいいという感覚が、
歯科医師側にも患者側にもありました。
いや、今もあると思います。

 

 

痛みに至った原因を追究し、
再び痛みが起きる可能性を排除しておこうという発想は乏しく、
痛みが再発すれば歯科医院に行けばいいという発想が、
多くの患者の感覚として
今も根強く存在します。

 

 

風邪をひいたら、病院に言って薬をもらえばいい。 
という感覚ではないでしょうか。

 

 

ところが、
数年~数十年にわたってこれを繰り返しながら、
歯を治療する箇所が増え、
最終的には歯を抜き、
義歯やブリッジに移行するケースが後を絶ちません。

 

 

自分の口の中の問題が、
いつの間にか大きな問題を抱えていることに気づいた時、
考えること、やるべきことの重大さに気づいた時、
歯科医療の問題に直面することになるわけです。

 

 

 

極端に聞こえるかもしれませんが
悪質な借金と似ていると思います。
歯の問題は、きちんと根本的に解決しない限り、
問題を先送りしているだけで、
いつか必ず、そのツケを払う日が来るわけです。

 

 

そもそも、人間にとって、歯科治療は必要のないもので、
食習慣や生活習慣がきちんと管理されていれば、
虫歯や歯周病になる確率はかなり低いのですが、
文明社会において、利便性を優先させるあまりに、
その代償として、様々な病気や疾患が生まれるわけです。

 

 

ただ、そうはいっても、
なかなか、この文明社会の中で生きている以上、
他に優先させなければならないことはあるわけで、
きちんとした食事をとることが
できるのはどうしても限られた人たちになる現実もあります。

頭ではわかっていても、なかなかできない。わけですね。

それでも、何かしなければなりません。
虫歯の問題、歯周病の問題は、普段の食生活やブラッシングと深く関わっているからです。

 

 

 

たとえば、砂糖の摂取を幼少の頃から控えるだけでも、
虫歯になるリスクはかなり抑えられます。 
虫歯を沢山抱えている子供の両親に、
食生活の内容を問えば、
砂糖の摂取がかなり多いことを認めます。

 

逆に、全然虫歯のない子供の場合、
間食もなく、砂糖の摂取も
かなり制限しているという報告を受けます。

 

 

お菓子を子供に与える理由を、
親はきちんと持つべきだと思います。
そこには、様々なリスクがあることを知る義務と責任があるのです。

 

 

歯科治療の前に、
まずは食事の内容と歯磨きの内容を見直すことから始めることが
何より重要です。
ここが最初のスタートポイント。

これができないとなると、
その先の歯科治療はもはや「運まかせ」
と考えてください。 
そこには予知性も計画性も初めからないことになります。

虫歯や歯周病にならない生活習慣を構築すること。
少なくともそのための努力をすること。

 

難しく聞こえるかもしれませんが、
「習慣化」すればいいだけのことなので、
できる人には、あっさりできることなのです。

 

 

 

これまでの歯科治療の歴史は、
そのほとんどが、
歯科医師も患者も「痛み」を取り除くことばかりに目を向けられてきました。

その結果、

1)日本人の口の中に対する健康意識はさほど変わっていないということ、そして今も、

2)歯科医療のほとんどが、根本的な治療ではなく、応急処置的な存在であること。

少し極論じみて聞こえるかもしれませんが、
この2つの事実を踏まえておくことで、無用な歯科治療を避ける考え方に結びつくようになります。

 

 

 

さて、、

審美治療と呼ばれる歯科治療は、
一般的な歯科治療とは対極的な治療です。

口元の美しさを創りだすための治療ですから、

応急的な治療とは正反対の治療になるわけです。
一般的な治療に比べて、時間とコストが何倍も必要になります。

 

 

痛みを取り除くばかりの歯科医師が突然審美治療を行ったところで、
きちんとした治療を施すにはかなり無理があります。

また、治療後の長期的安定も大切な成功条件です。

 

 

歯の形や並びを改善するときには、
歯科医師は様々な角度から考察しなければなりません。 
歯の形や歯並びにはそれぞれにきちんと理由があり、
「見た目」だけで判断すると、
そこにある機能のバランスが崩れ、
口腔機能に支障をきたす可能性が高くなります。

もともと、歯の形や歯並びは、

成長期における日常の生活の影響を受けて、ゆっくりとつくられていきます。

見た目が悪いというだけで、安易に形や並びを変えてしまうと、
その機能が失われるだけでなく、深刻な問題を発生させる可能性が生まれます。

 

 

審美治療を行う前に、

まず、現在の状態をきちんと考察し、
治療後のリスクをできるだけ事前に予測し、

問題が生じた場合の対処もきちんと用意しておくことが何より重要です。

一度変えてしまったものを、元通りにすることはできません。

 

 

新しい歯の形や、新しい歯並びは、

あくまでも歯科医師が任意でつくるものです。

 

歯科医師の考え方が未熟、
考察不足のままに治療を行ってしまうと、
新しい歯の形や歯並びは、
生体と調和できなくなる可能性があります。

 

痛みや不具合が直ちに生ずれば、対処も早くできますが、
問題が積もり積もってしまい、数年を経て発生した場合は、
身体側も大きな変化を生じていて、
改善すること自体がほぼ不可能だったり、
回復に長い時間と大きなコストが必要になることもあります。

 

 

歯を削り、良い材料で詰めたり、
被せたりすること自体はさほど難しい医療行為ではありません。

 

難しいのは、患者の生体機能を踏まえた上で、
適切な形、適切な並びをきちんと考慮できるかどうか? 
なのです。

これについては歯科医師によって考え方が異なります。
また、患者側にとっても専門的知識がないと、
なかなか理解するのが難しい現実もあります。

 

 

残念ながら、審美治療と称して、
実態は、医学的根拠を無視した方法で、
でたらめな治療を行う歯科医院も存在します。

これには様々なケースがありますが、共通する事項として、
あまりにも短時間、短期間で治療を行う傾向があると考えられます。

説明も乏しく、
患者さんが本当に知りたいことをきちんと伝えないまま、
治療を始めてしまうケースが少なくありません。

また、セラミックを用いてきれいに被せるのはいいのですが、
被せられる歯そのものに問題があるにも関わらず、
その問題を放置したまま
被せてしまうケースもあります。

 

歯を、口元を美しく見せようとすることは、
良いことだと思うのですが、
安易に行うと、かえって他の問題を生じてしまい、

取り返しのつかないことになるケースもあることを覚えておいてください。

では、どうすればいいのか?
本当の意味で優秀な歯科医師に治療を相談してください。

 

 

優秀な歯科医師は、
必ず患者さんにわかるように説明を行います。
また、決して治療を急がせません。
患者が抱えている問題点、患者が希望していることを、
医学的な意味に置き換え、患者さんに分かりやすく説明するはずです。

 

 

審美治療だけでなく、
時間やお金が多くかかるような治療であれば、
治療を始める前に、その治療の利点、欠点、将来のリスク、
問題が起きた場合の対処法など、事前にきちんと理解することをお勧めします。

同意書にサインをすれば、
そこから先は患者さん自身の責任も発生します。
歯科医師の言っていることをきちんと理解しないままに治療を始めてはいけません。

 

 

治療の目的、内容 期間、費用、利点、欠点、リスクの有無、
問題が生じた時の対処法や、

治療を通じて得られるもの、失うもの、など、できるだけ知っておいてください。

もちろん、あなたが心から信頼する歯科医師なら、

この限りではありません。全てを任せることも良いでしょう。

 

 

その治療が何をもたらしえくれるのか? 
何を約束してくれるのか?
こういう事を、できるだけ事前に明確にして、

なおかつそれを実行できる歯科医師ほど、
総合的に優れていると考えられます。

 

 

虫歯や歯周病の問題は、
一元論ではなく、多元論、つまり原因が一つではなく、
複数の原因がそれぞれに関与して起こります。

 

 

ゆえに、様々な角度から検証し、

各患者にあった予防法、治療法を考えなければなりません。

痛みや症状ばかりに気を取られてしまうと、
本当の問題、本質的な問題を外してしまうのです。

 

 

 

問題の本質を見極めること。

全ての鍵はここにあるのです

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院長 毛利啓銘
昭和46年11月19日生まれ
1996年東京歯科大学卒業

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